第5話 もし人間が工場生産だったら

 人間生産工場の朝は早い。

 人間生産工場の管理人である純一は今日も荒城の整備を行う

 いつからか、人間は工場で生産されていた。

 もしかしたら、昔から人間はこの工場で生産されているのかもしれない。数万年前から、この工場は人間を作っているのかもしれない。

 だが、それは純一にはわからない。

「ふぅ」

 純一は倉庫の中から人間の材料を出す。

 人間工場は各ラインに人間の材料をセットし、工場が動くことで人間が作られる。骨に筋肉や神経が巻き付き、内臓が治められ、最後に皮膚がかぶせられる。

 前日に何人死んだかの情報が来たら、それに合わせて人間を生産する。

「んー、昨日は15000人死んだのか」

 人間生産工場は常に前日の死人の数をもとにしてその日の生産を決めるのだ。

 機械が動くと人間が組み立てられる。

 組み立てられた人間は工場の排出口からぼんぼんと排出される。彼らは勝手にどこかに行く。

 機械音と共に人間がどんどんと生産される。

「ふぅ」

 純一は人間を見送る。

 勝手に生産されたら勝手にどこかに向かう。それを見送るのが純一の仕事である。

「生産ラインの整備とかしといたほうがいいかなぁ」

 このままだと残業だな、そう思いながら純一はより生産効率を上げるためにどうするかを考え出す。

 今日も順調に人間は生産されています。



          了

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