それは夢か幻か。
ラーメン屋にて怪しげな男に500円を貸し、そのせいで食い逃げを疑わることになった主人公。
手伝いを頼まれてドアをくぐると、そこは三年前に見た悲劇の瞬間だった。
だがそこは一つ決定的に違うことがあって……
本来であれば決して埋まることのない欠落。
そうしたものを取り扱う作品は数あれど、それを代用して埋めるのか、まったく同じものを取り戻すのか……といった二択が主流ですが、この作品の魅力はその答えに対して見せるひねりの妙にあるでしょう。
主人公はその行動によって本当に埋め合わせができたのかどうか……考えさせられる作品です。
ありふれた扉の向こうが、『違う世界』だった。
そういう想像は、したことがある人は多いと思います。
これは、扉の向こう側は主人公が置いてきてしまった過去、いわゆる“トラウマ”があったいう物語です。
この作品は、“演劇”というものを強く感じました。
演劇というものは、幕が上がると始まって、幕が降りると終わります。その前にも後にも、『人生』という名の物語があるはずなのに、それを見せてはくれない。見られるのは、その一部だけなのです。
この作品もそんな構成でした。
全てが綺麗に解決したわけではありません。
この物語の『前』と『後』がとても気になりました。
それは、『人生』の一部を魅せられてしまったから。
あなたも、“演劇”を読んでみませんか。
ラーメン屋でいかつい男に金をたかられるところから、すべての謎は始まります。
いったいコイツは誰なんだろう。
そして次々に謎が謎を呼んで行きます。
エピタイにあるように、ラーメン屋の裏口が『あの場所』に繋がっているんですが、そこで主人公を待ち受けているものもまた謎。
どうしてここに繋がったのか?
どうして三年前なのか?
どうしてみんな彼のことを覚えていないのか?
あらゆる謎が、ラストに向かうにつれてどんどんと紐解かれていきます。
そうかこういうことだったのか。なんて得心しながら、あれ? ちょっと待って?
途中で読者には一つの疑問が浮かびます。
ラストにはその疑問の解が提示されます。
その解が、誰を救ったのかは、あなたの解釈次第。
私は、タイトル通りに解釈しました。
さあ、もうすぐ開幕の時間です。チケットをお持ちの方はご入場ください。
席に着きましたか?
不思議な出来事の連続なのに、無骨なまでにリアルな作品を、どうぞお楽しみください。