鋭い視点で切り込まれたプロレタリア文学の一つの境地。

《ブラック企業化》する社会と、それに迎合していく一部の人々を《自己愛性パーソナリティ障害》という症状を切り口に描かれた意欲作です。

プロレタリア文学(労働者文学)と言えば有名な『蟹工船』(著・小林多喜二)が有名ですが、小林多喜二自身はタコ部屋などの苛烈な環境に置かれた労働者と接点はあったが、自身は苛烈な環境での労働経験は殆どなかったため(確か)、ところどころでリアリティに解れを感じる点があります。
また、もはや古典に近い作品の為、現代の労働者が感じる過酷な状況とは違った次元のお話に感じてしまうところがあります。

さて、作者様の本作は僕が古典的プロレタリア文学に感じていた窮屈さを見事に取り除いた作品になっています。
作中にて描かれた出来事が作者様の経験に基づいたものという事でリアリティに狂いは無し。

そして本書最大のテーマともいえるのが、《自己愛性パーソナリティ障害》というフィルターを通して分析された作者様が出会ってきたヤバい人々。
【成見】に代表される《自己愛性ブラック》な登場人たちのような、一見するとカリスマ性溢れ、ウェーイ!!な人々たちの裏側にある、他者を巻き込み、他人の人生を犠牲にする事すらも厭わない仄暗い闇が分析され、描かれていきます。

本書を読んでから思い返してみると、ボクも今までの人生で出会ってきた人々の中に多くの《自己愛性ブラック》が居たなぁ……と気付かされました。
せめて自分が、そのような人間にならないよう気を付けようと思います。

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