その違和感を見過ごしてはいけない。敵が何者かを知ろう。

 私もこの話にある成見さんのような(もっと正確に言うなら「中学教師」のような)上司によって心身を壊した事のある被害者です。
 彼らの無自覚な暴挙によって、最後には命まで取られかけました。
 その観点からレビューさせて頂きます。

 
 貴方の周りにも、何となく「妙にめんどくさい人」「おかしいのでは無いか?」「何をそこまで」と言う人間はいないでしょうか?
 そして貴方に対する「モラハラ」「パワハラ」と言う形で実害が出ていると言う事は無いでしょうか?
 一度、こちらの作者様が言われている「自己愛性パーソナリティ障害」を疑ってみる事をお勧めします。
 もし違うのであれば、それはそれで良い。
 しかし、この耳慣れない自己愛性パーソナリティ障害は決して珍しいものではありません。一説によると、一般人口の実に0.5%もの比率で当該病質を持っているとさえ言われています。
「普通に生きているだけ」で周囲に致命的な害を及ぼす病質の人間が、病気の認知度の低さから当たり前のようにスルーされ、社会に溶け込んでしまっている。
 そして、何の病気も持たない人が安易に彼らを模倣する事によって、人の命まで奪う「ブラック職場」がより強固に作り上げられてしまうのです。
 全ては、一般レベルに啓蒙が及んでいない事が原因です。
 かく言う私も、小説執筆の為にたまたま自己愛性パーソナリティ障害を調べていた事がありました。
 そうであるにも関わらず、最後まで、私を潰した上司が自己愛性パーソナリティ障害では無いかと、欠片も思いつく事が出来なかった。
 全く知識の無い、大半の経営者や上司達が、彼らの存在に気付くことはまずありえないのです。

 本作品は、そうした「違和感」の正体に名前を付けてくれます。
 これがあると無いとでは、自衛の意識にも大きな違いが出てきます。
 私は今でも、自己愛性パーソナリティ障害とおぼしき知人や親戚に振り回され、戦いを余儀なくされています。
 それでも本作品をきっかけとして、自己愛性パーソナリティ障害をより真剣に調べるようになった事で、今までよりは的確に、ゆとりを持って彼ら彼女らと相対出来ているのではないかと思います。
 10年後、彼らとの関係がどうなっているのか。そこまでプランを考える事が出来ています。
 冒頭で挙げたブラック職場に居た時から、本作品に出合っていたなら……辞めると言う結末こそ変わらなかったでしょうけど、何かが確実に違っていたと思います。
 
 このような人たちの被害に遭っている方は「自分がおかしいのでは無いか」と自分を責めてはなりません。
 彼らは「正論」を巧みに扱い、虚実を使い分ける能力……言い換えれば詐術と洗脳の手腕に長けています。
 そのメカニズムも、本作品は徹底して論理的に解析してくれていますので、ブラック職場のみならず、あらゆる場面での防衛のためにも、ぜひ一読をお勧めします。
 
 事は本当に、人命や人生に関わる事なのです。

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