ダメな奴だからダメな奴のダメじゃないところがわかるんだ
- ★★★ Excellent!!!
諸々あって2回も留年した末、なんとか卒業までこぎ着けた大学生の“俺”は、元同級生で現在ニートな友人、三好と『マイムクラフト』なるゲームを、あろうことか大晦日の夜に並んでプレイしている。唐突に我に返る彼。しかし状況が一変することはなく、彼と三好は自分を顧みて、薄暗い予感しかない先を思うのだが——その絶望は鮮やかに一変する!
弱者男子がやるせない年末を過ごすだけのお話? ちがいます。ひと言で言ってしまえば最高の友情ドラマです!
登場人物であるふたりは共に、自分がダメな奴だと自覚しています。大晦日というその年最後の特別な日だからこそ、ことさらに噛み締めるわけですね。その有様を綴るだけでもドラマになるところを、著者さんは転じるのですよ。自分のダメさに沈む三好くんを、“俺”くんが最悪なダメさを爆発させながら蹴り起こすという急展開で。
ダメなのに熱い、熱いのにリリカルな読後感をくれる本作、きっと今年の心残りを抱えるあなたを許し、先へ向かわせてくれますよ!
(「行く年と来る年と」4選/文=高橋 剛)