蛇足(番外編的なもの)

寂しいなんて言えない

 深い碧に包まれた静かな空間、“海の底”と呼ばれる場所で、麦わら帽子の少女はひとり、退屈そうに遠くを見ていた。


「何もないって、退屈ね」


 ぶくぶく、と息を吐く音はするものの、それ以外の音は全くしない。


 少女は待っている。あの子がこの場所の来るのを。

『変わるのが怖い』と言う少女の悩みを一蹴した、あの子がこの場所になくした現実ものを取り戻しに来るのを。



 彼女はまだ来ない。

 でも、寂しいなんて言えない。言う資格なんてない。


 少女はそう思いながら、ぶくぶくと息を吐き出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

海の底で、君を想う 聖願心理 @sinri4949

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ