もしも自分が同じテーマで小説を書くのだとしたら──そう考えると、スマホを落としそうになりました。理由はとても陳腐な物語になるはずだからです。 ところがこの物語がありきたりなものになっていないのは、作者さんの巧みな表現方法のおかげでしょう。「指に──」といった箇所は、本来ならアレのこと書きたくなります。が、あえて書かないことで、主人公の心情をうまく表せているように感じました。
人を思う気持ち。でも叶わない。だけど、相手を傷つけたくないから、強要しない。そんなせつない思い。
自動車などのブレーキペダルには『遊び』と呼ばれる範囲がある。『遊び』がないと、ペダルを踏んだ瞬間に急激に停止してしまい事故の元になる。いわば適切な緩衝を保つための機能である。 本作では、主人公の…続きを読む
最低限の事柄しか書かれていないことが、そこから放散するイマジネーションを刺激しつつ、テンポの良い文章を実現している。自転車、風、夕日、蚊取り線香などの道具立ても良い。
「あのひと」を追いかけ続けていた「僕」。月日は流れていき、成長した僕はやがて、あることに気付く……とある思いが辿り着いた結末の、切ないお話です。
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