あとがき 異世界への進出

遊女屋敷での事件から早数週間が経ち、事件は完全に収束へと向かっていた。私が短期間勤めた屋敷は以前の活気を取り戻していき、花魁である奈月さんもまた人前へ出て人々の注目を集めているらしい。依頼で潜入したものの、なんだか寂しいような気もしている…あの場所は雑用係の私にも暖かく接してくれ、みんなが思い思いに働いていた素晴らしい場所だったからなのかもしれない。

「玲子ちゃん、私ね…時々思うことがあるんだ。」

『何…?』

「私達は依頼を達成するのが今まで上手くいきすぎてたんじゃないかって時々思うの。」

布団に横たわりながら私はそんなことを玲子ちゃんに言う。

『依頼というのは必ずしも良い結果で終わるとは限らないわ。確かに美子の言う通り、私達が今まで上手くいきすぎてたのかもしれない。失敗をあまり経験しないっていうのも難しいものね…』

「…そう…だよね…」

でも、いつまでも咲寺さんの死を引っ張っていく訳にはいかない。この失敗を反省して私達はまた一歩、進化していくんだ…!

「ちょっと喋りすぎちゃったかな?じゃあお休み、玲子ちゃん。」

『えぇ、お休み。』





「ん……あれ…?ここはどこ…?」

朝だと思って目を開けると、そこは得体の知れない森の中だった。

「えっ…私達は昨日宿屋の中で寝たよね?」

『そ、そのはずなんだけど…』

これには玲子ちゃんも動揺を隠しきれないか…それもそのはず、目覚めたら森の中にいるんだから…

「でもここって何か不気味だね…人の気配があまりしないっていうか…」

『とにかく、辺りを探索してみましょう。』

「分かった…探索してみるよ。」

そう言い、辺りを見回そうとしたその時…

「ギャァァーーー!!化け物ーーー!!」

「悲鳴!?」

『今すぐ助けに!!』

悲鳴のした方向へと向かうと、若い男女が妖怪の土蜘蛛に襲われている…!男性の方は木の幹に蜘蛛の糸で縛られてしまっているようだ…

「玲子ちゃん、お願い!」

フッ…

「任せて!」

ジャキィン!!

刀から発せられる鈍い金属音が森林に響き渡る。なんとか間に合ったみたいだ…

「グジャァァァウ!!!」

「何だ!?」

縛られている男性は私を方を向いてぎょっとした様子を見せている。

「怪我はない?」

どうやらここは私達のいた世界とは違うようだ。もしこの仮説が本当なら合点がいく…



そして、後に私達は思わぬ人物との再会を果たすのだった…



終わり。そしてロスト・ジャッジメントへと続く。

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大正百鬼夜行~遊女屋敷事件編~ Next @Trex

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