可愛くて、コミュ力お化けで、頭も良くて、スポーツもできる。そんなスーパー転校生朝露に、主人公大輔は『儚い』と感じます。
その正体が、読み進めるごとに明らかになっていく。
そこかしこに散りばめられたきらきら輝く朝露のような文章を読んでいるうちに、作品世界に没入していきます。世界は文体に宿るのだと確信させられる作品でした。
また、この主人公大輔が、今後どのような人生を送っていくのかと思いを馳せるのは、読後の楽しみだと思います。
私は一瞬バッドエンドを想像したのですが、最後の数行に作者からの救いがあり、ハッピーエンドを想像しなおしました。
私は昼下がりに、早朝の朝露を湛えた道端の草を思い出しながら、それが黄昏に染まる姿を想像しました。
主人公の男子高校生のクラスに、転校生がやってくる。その転校生は儚げな美少女だった。クラスが同じで、登下校の時も同じ駅を使う二人は、徐々に距離を縮めていく。しかし、二人の心地よい時間は、唐突に終わる。
それは彼女の家庭が抱えるある問題によって、引き起こされた。
早朝にだけ見ることが出来る、一滴の雫。朝露。
それは、太陽が昇ると消えてしまう儚い存在。
それでも、彼女はここにいた。
朝露のような奇麗な雫を目に浮かべて。
彼女の見栄。虚栄心。それでも、主人公は――。
切なくもほろ苦い青春の一ページ。
伊勢物語の「露と答えて、消えればよかったものを」という
一節を彷彿とさせる一作。
是非、御一読下さい。