例えば人は、刺しもしない黒い虫が物陰から現れただけでもギョッとするものである。
ならば現れたものが人間よりも大きく、より異質で禍々しく、そして人を簡単に殺しうる存在であったらどうだろうか。
正気を失うか、これは夢だと思い込むか、いずれにせよ平静ではいられないはずだ。
しかし、我々のよく知るファンタジー勇者達は、魔物共を相手にそんなそぶりを見せはしない。我々も、そういうもんだと思っているがゆえに、違和感を感じない。
この短い物語は、そういった現実とファンタジーの溝に投じられた一石である。
元英雄の介護施設というアイディアに続く、ファンタジーの語られざる一幕。素晴らしいアイディア。
皆さん、是非ご一読を!
狂ってた!(褒め言葉)
物語の最初から最後まで、狂った!(褒め言葉)
目の付け所というか、発想というか、お見事というしかないです。
今、流行っている『異世界ファンタジー』の闇を見せつけられた気分です。
作中に出てくる、『お国のために、廃人になっても戦ってくれ』というセリフ。
そうでもしないと、戦っていけないよな、としみじみと思いました。
ファンタジーはご都合主義な部分がかなりあります。それを無視しないと、キリがないし、面白いものが創れないから。
私たちは知らず知らずのうちにそれ無視し、そう言うものだ、と受け入れてきました。
それを無視しなかったのが、この作品。きっと、短編だからできることだと思います。
最後の展開はぞわぞわっときました。
是非、異世界ファンタジーを読んでる方々のに、読んでもらいたいです。