小説の投稿サイトで知り合ったエイナさんに会いに行くあたし。エイナさんは大人の素敵な女性だった。喫茶店で二人はマシュマロ入りココアを飲む。向かい合い、同じものを飲んでいる二人。あたしはエイナさんであり、エイナさんはあたしである。いきづらさをかかえるあたしはエイナさんに会う事で、少し楽にいきができるようなった。それなのに、エイナさんを見失ってしまう。
高校生の女の子が、小説投稿サイトで知り合った大人の女性に憧れる。彼女の青春のそんな一断面を鮮やかに切り取った一枚の写真のような掌編です。ただ、その一枚の中には、視覚だけでなく、嗅覚、触覚、味覚に訴えてくる鮮烈さがあります。それはハイティーン特有の閉塞感と相まって、読者の感性を痛いくらいに刺激します。そんな痛みを和らげるのは、本編に登場するマシュマロ入りココア。若さゆえの閉塞感も、大人ゆえの虚しさも、甘く温かなココアが優しく包み込んでくれるよう。読後、私もマシュマロ入りのココアを飲みたくなりました。
「あたし」があの人から貰った言葉広くするには、それ相応の努力や忍耐が必要だったりもするけれど、広い世界はあると認識させてもらえるだけでも価値はある具体的には何も描かれていないのに、思春期の逃げ出したくなる焦燥感が伝わってくる佳作
きっと、どちらも。本名も名乗れないまま、消えてしまった彼女。無防備な私。それを優しく諭す彼女。マシュマロ入りココアが暖かく染み渡ります。彼女の言う大人になっても、彼女を忘れられない私。再会の時は、訪れるのだろうか?その目で、確かめてください。
もっと見る