造仏工から見た時代の転換期と歴史上の人物の意外な視点

 所謂崇仏論争の時代、主に造仏工(ほとけつくるたくみ)の鞍作止利という人物の視点で話が進められている為、歴史的な内容はダイジェスト的ですが、日本書紀に登場する人物、例えば蘇我馬子や物部守屋といった人物の互いに対するある意外な想いや(確かに物部氏寄りの立場であるはずの先代旧事本紀では蘇我氏が悪く書かれていないのですが)、秦河勝が曲者っぽく描かれている事など、その意外な視点は私の様な日本書紀の記述に囚われがちな立場からすると斬新に感じます。

 また、小説の題材としてはつい飛ばしてしまい気味な経済的な話、物部・蘇我と当時の朝鮮半島との関りなどにもきちんと触れられています。

 森公章氏・加藤謙吉氏・平林章仁氏など著名な古代史研究の専門家の知見もよくご存じなので、古代史を知る方には面白い内容かと思います。