何度もコメントをしようと躊躇しながら……。

 正直、戦争も知らないのに下手なコメントは出来ないかなと、何度もコメントをしようとしては躊躇しましたが、レビューだけは投稿します。

 コメント欄を拝見したところ、従伯母さまが従軍看護師として痛ましいご経験をなさった事があるそうで、その事と関りがあるのか、描写のリアリティーさは群を抜きます。
 当方の祖父も、土木学者としてシンガポールに従軍した事があり、飛行場の開発に関わっただけにも拘わらず、軍人でも無いのに何故か捕虜虐待の疑いをかけられ、危うく処刑されるところでしたが、捕虜の食糧確保に駆けずり回っていた事を華僑のコックが説明してくれて、処刑を免れたと伝え聞いた事がある為、他人事とは捉えられません。

 軍人は戦時下では如何に救われようが英雄だろうが、戦争が終われば政権側からみれば寧ろ秩序を乱しかねない厄介者。
 政権を築いた権力者により、戦争で活躍した武断派が追放、あるいは粛清されるのは歴史が物語るところ。
 これがマクロな現象であるならば、ミクロレベルでも人間のやる事なんて大して変わらない。
 変わる周りに対し、主人公は変わる事が出来なかった。
 いや、本来は前者と同じく変わるべく性質を戦争により不可逆的に捻じ曲げられ歪められ奪われた被害者だった。

 ―停戦したからと言ってハイそうですかと地雷も消える訳ではない。―

 頭の中に、人の死よりも領土拡張しかないある指導者にこの言葉をきかせてやりたい。

  不幸な事に主人公の心の地雷もついに除去される事は無かった。 

 某国により日々行われている現在進行形の非道は仮に停戦、或いは終戦したとしても、本作の様な兵士は実際に誕生してしまう可能性がある。

 ディスプレイ越しの風景で実感が無いとは言え、これを隣国が引き起こしているという事実にぞっとする。

 本作はある意味小説(fiction)であっても小説(non-fiction)ではないのだ。