鞍作鳥の飛鳥日記

鹿月天

序章


 煌びやかな黄金に鮮やかな濃青。

 それはまるで、稲穂が揺れる飛鳥の空。

 日の光が昇る大海原だ。


 まさか自分がここまでやってくるとは。

 目の前の白く長い指はあの日よりも幾分か大きい。しかし手の温もりは、清らかさは、初めて出会ったあの日のままだ。


 全てが変わり果てたこの場所で、ただ目の前の微笑みが瞳に焼き付いた。十年目指し続けた祈りの象徴であり、世を満たす光そのものである。



 彼との出会いは約二十年前。まだ、この国の奥底に根付く仏教の教えが、異国の神だ、蛮神だと言われていた頃のお話。

 敏達天皇十四年──西暦五八四年の事であった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る