余談「生が二人を分かつ間に」
「ねぇ千景、すべての魂はもともと一つで、生きている間はそれが分裂して、体っていう器に入ってるんだって。知ってた?」
「どこの宗教の話ですか……?」
「真面目な話よ?」
「はいはい。それがどうかしたんですか?」
「いーや、そう考えたらすごいなって。一つの魂である間は、私も千景も、他のどんな人だって同じものじゃない。きっと思考も何もかも共有してるのよ」
「あぁ……言いたいことはなんとなくわかりました。雪さんの言葉に震えた私が、私の言葉で誰かの心を震わせようとしているこの状況は、私が生まれるのが遅くても、雪さんが死ぬのが早くても、起きなかった奇跡だと?」
「まぁつまりそういうことね。死んだら、他人の言葉で心が震えることなんてないんでしょう」
「……死ぬのは、怖いです」
「そりゃあそうよ」
「そうじゃなくて。……貴女の言葉が、私の心に響かなくなる、そんな日は来なくていい」
「かっ……わいいこと言うじゃない。でもいい?私は千景が大好きよ?死んだくらいで逃げられると思わないほうがいいわ」
「ぷっ」
「笑ったわね?」
「笑ってない……で、ふふっ」
あぁ、いつか、私の言葉が貴女の心を震わせられるなら。
必ず仕返しをしてやりたい。
貴女の言葉に人生を変えられた、私が、
私の言葉で、貴女の人生を変えてやる。
いつか。
いつか、生が二人を分かつ間に。
生が二人を分かつ間に 硝子の海底 @_sakihaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます