余談「生が二人を分かつ間に」


「ねぇ千景、すべての魂はもともと一つで、生きている間はそれが分裂して、体っていう器に入ってるんだって。知ってた?」




「どこの宗教の話ですか……?」


「真面目な話よ?」


「はいはい。それがどうかしたんですか?」


「いーや、そう考えたらすごいなって。一つの魂である間は、私も千景も、他のどんな人だって同じものじゃない。きっと思考も何もかも共有してるのよ」


「あぁ……言いたいことはなんとなくわかりました。雪さんの言葉に震えた私が、私の言葉で誰かの心を震わせようとしているこの状況は、私が生まれるのが遅くても、雪さんが死ぬのが早くても、起きなかった奇跡だと?」


「まぁつまりそういうことね。死んだら、他人の言葉で心が震えることなんてないんでしょう」




「……死ぬのは、怖いです」


「そりゃあそうよ」



「そうじゃなくて。……貴女の言葉が、私の心に響かなくなる、そんな日は来なくていい」




「かっ……わいいこと言うじゃない。でもいい?私は千景が大好きよ?死んだくらいで逃げられると思わないほうがいいわ」


「ぷっ」


「笑ったわね?」


「笑ってない……で、ふふっ」






 あぁ、いつか、私の言葉が貴女の心を震わせられるなら。

 必ず仕返しをしてやりたい。



 貴女の言葉に人生を変えられた、私が、


 私の言葉で、貴女の人生を変えてやる。




 いつか。






 いつか、生が二人を分かつ間に。

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生が二人を分かつ間に 硝子の海底 @_sakihaya

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