足元危険!! 疾走感あふれる青春×ミステリ×ホラー×ファンタジー

読みはじめは、いたって軽妙な青春小説。テンポよく進む会話、おちゃらけ男子同士のじゃれあい、健康で平凡な高校生のダルダルな日常、恋と友情にまつわる思春期の機微、もうそれだけで充分に魅力的。でも、その爽やかテイストに油断していると、足元危険!!気がつくと、ぐらぐらっと底が抜けて、落下していくような感覚を味わうこと必至です。

ふとした会話から、同じ夢を見ている偶然に気づいたのは、もも、拓海、猿川、なぎさ。
そして、どうやら共通の友人がひとり、この世界から消えているらしい。その謎解きに4人で力をあわせて挑むのですが、記憶が食い違ったり、自分の知らないことを相手が知っていそうだったり、彼らをとりまく世界のピントが、少しずつ、でも確実に歪んでゆく不穏さが絶妙です。

目の前の扉がどんどん開いていくような疾走感のある筆致に導かれ、無我夢中で読み進めていく先に待ち構えるのは、何が正しくて真実なのかが曖昧な、虚実入り乱れた“呪い”の世界。ぜったいに何かがおかしくて狂っているのは間違いないのに、肝心のそれが、どうしても思い出せない。んんん・・・???お互い疑心暗鬼にかられながら、それでも、自分の心の動きに正直に、眼前にあらわれる世界と真っ向から対峙しようとする高校生たちがとってもチャーミングです。

作者が自分の物語の登場人物たちに息を吹き込むとき、どんな意図をもって名づけたんだろう、とよく想いをはせるのですが、本作でも「名前」それ自体が固有の磁場を持つ、重要な鍵になります。物語が入念に、二重底にも三重底にも入れ子構造になっていて、叙述トリック的な仕掛けも周到に埋め込まれているので、読了後、思わず最初から読み返したくなってしまうこと間違いなし。

じわじわまとわりつくような怖さとエモさが見事に融合した青春ミステリの感想を、ぜひみなさんと語り合いたい!
(M)

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