美しき少年たちが出会った運命の恋。それはあまりに苦く、甘かった。

 舞台は英国の全寮制学校。おぼっちゃま育ちの快活なルカと、どこか影のある美少年テディが出会い、いつしか二人は惹かれ合う。でもそれは、波乱の人生の始まりでもあった ───

 とても美しい物語です。映像がありありと浮かんでくる風景や街並みの描写、丁寧に描かれる人物の心情、学友たちとの交流の臨場感、懐かしさを感じるたくさんの音楽たち、美味しそうなスイーツの数々。
 そして何より、登場人物が美少年。
 しかし……蠱惑的とも言えるその美しさ故なのか、テディは暗い過去を背負っています。いや、過去だけでなく現在進行形でも……酷く傷つけられ、壊され続ける彼の纏う退廃的な雰囲気が、さらに彼を妖しく美しく見せているのかもしれません。
 周囲の人たちもそんなテディに翻弄され、特にルカは苛立ち悩みます。
 読むのが辛くなるような場面も多々ありますが、それでも読み進めてしまうのは作者さまの力量でしょう。
 私も登場人物に殺意を覚えたり叱りつけたい衝動に駆られて時に枕を殴りつつ、結局はルカとテディの幸せを祈りながら涙とともに読み終えました。
 この物語が一貫して音楽に彩られていることも心憎い演出です。特にラストでそれが効いてくる……おっと、これ以上は言えません。

 ただひたすらに愛を貫こうと模索する少年たちの、痛々しいまでの生き様が胸を打つ物語。さぁ、続編を読みに行かなくちゃ。

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