第30話 真っ白い

「見てごらん」

 声を合図に、センサーに通電した。情報が溢れ、その処理にわずかの時間を割き、そしてようやく外界を

 星の海に浮かぶ、真っ白い外殻。012の数字が要所に浮かぶ宇宙機。人類の揺り籠、シリウス系恒星間宇宙船。

 どう、と尋ねた声は軽やかだ。内之浦うちのうらの管制室で、桧垣博士の目が皺に埋もれていた。

「綺麗でしょう。この船を任せるわ」

「承知しました」

 人類が地球を巣立つ時が来た。新天地までの長き道を往く真白の揺り籠。それを守る大役、きっと果たしてみせる。シリウス系は人々の、桧垣博士の、012号機の夢だ。

「願いと祈りを込めて、名前をあげましょう。そうね、暗闇と困難を払う光芒たれ。……頼みましたよ、麗威レイイ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

麗威の見た夢 凪野基 @bgkaisei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ