哀しい過去をもった色子と御家人崩れの武士の一夜の恋

まずは文章の美しさが江戸時代の雰囲気、色街の風情を情緒豊かに描写しており、冒頭の迫力ある捕り物の場面と相まって、直ぐに物語の世界へと引き込まれました。

事情があって武家の出自ながら陰間茶屋で色を売る伊織が、人を殺めて捕り手に追われた御家人崩れの樋口を色街に匿う。そんな限られた空間、時間の中で、ひととき結ばれる二人の心の動きも丁寧に描写されており、読めばただ、溜息をつくばかりです。

短い物語ながら、最後に、え、と驚くような事実も明かされ、結末は悲劇ではあってもこの後に続く物語があることを読者に予感させる、そんな余韻を読後に感じました。

この物語が書かれたのは2,3年ほど前になるのでしょうか、けれどこの物語は作者様が今も書き続けられている本編の物語の番外編であるとのこと、時代物をじっくりと楽しみたい方は是非、こちらの作者様の作品をご覧になって下さい!