魔女と魔獣は太陽と月のよう。

 嵐の夜、心に傷を負った魔獣と秘密を抱えた魔女が出会う話です。文章は非常に読みやすく、癖のない言葉選びにより老若男女問わず好きになれる作品だと思います。ただ、魔女は癖のあるタイプでした。終始ペースを握り、魔獣を翻弄する様は文字通り「魔性の女」です。
 本作はストーリーだけでも十分に楽しめそうですが、ここで面白さに拍車をかける構成が組み込まれております。それは魔女と魔獣、互いの視点を繰返しながら進む点です。これにより元々良識のある魔獣の心中が描写され、想像している魔獣然とした態度とのギャップを楽しめます。
 次に、魔獣視点で書かれている飄々とした魔女の姿を、今度は魔女視点で見ることで、彼女自身の本音やおっちょこちょいな部分を知ることが出来ます。この二人の発言と本音を交互に見ることで、二人の人となりが読者に良く染み込んできます。そう思いました。
 読むほどに二人の事が好きになれます。そういう作品はキャラクターに愛着がわくので、会話をしているだけで楽しめるのです。ストーリーに愛着を加えることで、読者を掴んで放さない作品だと思いました。一方ストーリーに目を向けると、珍妙な二人の関係とうって変わって闇を抱えた面もありそうです。
 本作は魔獣たちの呪いを解くことが大きな筋書きです。これは某名作と同じだと思うかもしれません。まだ結末は分かりませんが、現段階において分かることは、アプローチが全く違うということです。似て非なるものです。これがどういうことかは実際に読んでみてのお楽しみです。私も続きを望んでいます。
 闇を抱えたと書きましたが、あくまで印象であり、魔女の明るさや強さ、魔獣の紳士的な物腰により「なんとかなりそう」という希望の方がが大きく締めています。これはストーリーの上手さというより(もちろんそれもありますが)人物像を上手く読者に伝える作者様の力だとお思います。
 まだまだ連載中です。楽しく読めるものは文字数の負担を感じません。今からでも読むことをおすすめします。

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