十年目の破綻を読んで。

 すばらしい小説でした。人物間の関係、起こる事件、物語のながれ、抜群のバランスだと思います。
 ミステリーの面で率直な感想を交えますと、謎の難易度は低いです。しかしそれは本作において長所です。からくりに気づいてなお面白く、また興味深く読み進められたのは、この悲劇を俯瞰でみわたすことのできる読者ならではの所謂『万能感』といいますか、わかったうえで読む楽しさがありました。そして人間のある種『異常さ』を理解させる作者様の技術によるためです。
 なにがどうなっているかではなく、どう決着をつけるのか。その点でページをめくる意欲が掻き立てられました。
 読まなければ意味のわからない感想をひと言残しますと、作中で過ぎる十年の間、彼女はずっと首をしめられていたのだと感じました。
 シリアスなドラマを求めている方におすすめします。