つらつらとしたためられた念のような、妄想のようなモノを読みました。これが何かとハッキリ形容するには私の感性が足りません。それでも作者様の表現した世界は、どこを切りとっても『名文』であふれてありました。ただし、吐き出される想いの濁流は決してキレイなばかりでなく、むしろ生をグロテスクに書きつらね、ある種の酔いを誘うものでした。本質的な部分をつかめなくとも文を読みすすめることに面白みがあります。
この手の作品は作者様の顔がみえる気がします。当然文面からの印象ですので、それが作りものである、つまりまったくの別人をみている可能性は多分にあります。が、本作のいわゆる独白文に綴られている自己完結の世界は、普段から作者様が想い抱えているものでないかと勝手ながら考えていました。
そう考えると、本作はストーリーではなく、作者様が吐露した胸のうちを覗く文芸術だったと、解らないことが面白いのだと、一応の納得はできます。
最後に、タイトルの意味もジャンルがファンタジーであることも謎でした。読者にしこりを残します。他の方が読んだ感想も読んでみたいと思う反面、だれに説明されても納得できそうにない、自分の解釈だけで仕舞っておきたい。そんな興味深い作品です。