どこまでも愚直な文体と展開から垣間見える、汽車への哀愁と惜別。

なにか、大切なものを棄ててしまったとき。大切なものが、平穏な日常に隠されていたことも知らずに棄ててしまったとき。あれが大切なものだったとは、棄ててから、やっと気づく。

ある程度論理のわきまえた大人なら、もう取り戻せないのだから、考えても仕方のないことだ、と、あきらめる。しかし、あきらめきれないことなんて、この世にはたくさんあるのだ。

レールの上を走る汽車のように実直、いや愚直なまでの文体と展開は、ある意味刹那的な青春を謳歌しているともいえる。

作者のあとがき『執筆後記』も必見。

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