ヒーローの中に……

 人間の持つエゴ、良心、役割、愛情、葛藤、それらのものがこの物語の中にうまく組み込まれていて、よく出来た話だと思った。
 初めの取っ掛かりはそこからだったのだが、読んでいくに従いそれだけでは無いものに気づいた。それは意志の力である。意志を強く持つと人の強さは他を凌駕するものになる。それをこの作者はよく分かっているのだと思った。
 意志の力が働く時、人は信じられない力を発揮する。いわゆる火事場の馬鹿力というものだ。それをお仕着せの教育じみた話にするのではなく、ヒーローという存在を介して誰が読んでも分かるように、エンターテイメント性も発揮して伝えているのだ。それには正直驚いた。読み込んでいくとそれが彼の目指すヒーローとして視覚的に見えてくる。
 本当によく出来た話だと思った。

 ここからまだ話は続く。主人公の男の子としか言いようがなかった青年が、どうなって行くのか、彼の現実世界での変化も同時に、これから先も読み進めたいと思う。

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