HENSHIN!――契約×変身×バトロワ!願いのために、最後の一人になるまで闘え……戦え……!

ナイン

プロローグ

第零話 夢見た契約

 左手が燃え盛る不死鳥に触れたと思った、その瞬間だった。


 僕は、また見知らぬ空間にいた。

 霧がかかったような真っ白な空間。


『なかなかの度胸じゃの。お主』


 霧の中から、小さな人影が近づいてきた。巫女のような格好をした、小さな女の子だ。真っ赤な髪に勾玉の髪飾りがふたつ、高い位置でとまっている。


「きみは……」

『わらわは第19番目の≪アルカナ≫。正式名は≪太陽≫じゃが、エーオース、バステト、天照大御神、摩利支天――これらの名前で読んでくれても構わんぞよ。わらわのオススメは、天照大御神のアマちゃんか、摩利支天のマリちゃんだの』

「えっと……じゃあ、アマちゃん」

『素直だのう! 良い、良い』

 

 アマちゃんはうんうんと頷きながら言った。

 小さいのになにやら尊大な物言いと古臭い話し方の女の子だ。

 しかし、≪アルカナ≫ということはもしや。


「きみ、アマちゃんは、ひょっとしてあの火の鳥だったりするの?」

『いかにも。わらわの≪神々の玩具箱アルカーナム≫での姿は陽炎を纏いし不死鳥ぞ』


 胸を張るアマちゃん。

 しかし、すぐしゅんとするアマちゃん。


『お主らを襲ったのは悪かったのう。しかし、わらわたち≪アルカナ≫もお主ら契約者と似たようなのために≪神々の玩具箱アルカーナム≫におってのう。弱き者と契約しては敵わんということで、ああして威嚇することもあるのじゃ。まぁ、そもそも契約せねば始まらんと言うことで、節操無しに契約する≪アルカナ≫もおるがのう。わらわはそういうのは好かん』


 しゅんとしたかと思うと、今度はビシっとこちらを指すアマちゃん。

 表情がころころ変わる子だなぁ。見ていて面白い。


『しかしその点において、お主がわらわに触れたのは僥倖じゃ!おなごを助け、陽炎に包まれしわらわに触れる勇気。お主はわらわを纏うに相応しい契約者じゃ!』

「契約者……僕が、きみの」

『うむ。お主が纏うのはこの≪神々の玩具箱アルカーナム≫で最も強く耀く鎧じゃ! まばゆいぞ、天下一ぞ! この幸せ者めが!』


 にっこにこのアマちゃん。


『よいか、勇者よ。わらわの力を呼び出したいときはこう叫ぶのじゃ――』

 

 そしてまた、僕は光に包まれた。




 戻って来た!視界は廃墟の中を落下中だ。

 しかし、左手の薬指を包む炎の熱が僕に自信をくれる。見ると、≪檻の指輪≫のデザインが変わっている。

 透明だった色は赤に。シンプルだった形状は炎をイメージさせる波打つ形に。石座には赤い石が嵌まっており、中にはギリシャ数字の十九が埋め込まれている。

 曇り空の向こうにきっとある太陽めがけて左手を伸ばし、僕は、叫んだ!


変、身へんしん!!!」


 直後、地面に激突する。

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