根暗の眼鏡な先輩が、後輩くんに向かってラノベを熱く語る会話劇。
語られるラノベは現実には存在しない架空ラノベなのですが、リアル感がすごく、細部まで練られたものであることが伝わってきます。また、先輩の興奮具合などからもその面白さが感じられ、読めないことが残念に思えるほどです。
それを聞く後輩くんのツッコミは時に冷徹だったりもするのですが、受け止める先輩の反応がまたすごい。どうすごいのかというのは読んでください。すごいから。
ただのボケとツッコミに収まらないやりとりは変幻自在で、あちこちから繰り出される予測不能の楽しい展開に毎話笑わせてもらいました。会話劇という制約があるからこそ発揮されるテンポの良さが心地よく、やられたー!となったり、やっぱりー!となったり、そう来たかー!となったり、本当に楽しかったです。
気軽に読めるけど、面白ラノベを何冊も読んだような満足感が得られる作品だと思います。おもしろかったあああ!!
ちょっと下ネタが多くてアプローチが独特な根暗眼鏡文芸部の先輩女子と、毒舌な後輩男子による架空のラノベ紹介系青春ラブコメディです。
紹介されるラノベは全て存在しません。作者、文庫、ジャンルも毎回様々。あらすじを聞けばどれもオリジナリティと魅力があって「おお、これは!」と興味を惹かれること必至。読めないのが残念ですが、それだって本作の醍醐味です。それはすなわち、ラノベ(と後輩君)を愛する先輩の何とも愉快気な口上であり、初々しく興味津々な後輩の反応だけで内容を想像し続けられるということ。そうしていると、二人と同じ教室にいたような、同じ時間を過ごしていたような気持ちになれました。
二人の会話は軽妙です。丁々発止で、ユーモアがあって、同席していたら笑わずにはいられないでしょう。あなたがラノベ好きだったらもっと楽しいはず、間違いない。かように本作の描写はその巧みな会話が中心ですが、でも、それだけではない。読み返せば台詞の間にあったような、部室の臭い、衣擦れの音、窓から来る外気。どこから来るんだろう、会話から得られる情報か印象か、『ライトノベルを語っていたあの部室あの時間あの二人』が立ちのぼる得難い体験として読後に残りました。
泣ける短編集があります。武骨で勇壮なファンタジーがあります。信じられない程お下劣なのもあります。それら全部が語られて、初耳だったけど面白そうで、その話を聞くのは楽しかった。読み終えてしまった今は寂しいですが、誰かと屈託なく物語の話をしてみたくなるような前向きな気持ちにもなれました。
あの二人、この後どうなると思いますか?
作中で紹介されたラノベの内どれがお気に入りですか?
今度はあなたの話も聞かせてください。
最初に、独りよがりな解釈、的外れな指摘については、あらかじめお詫び申し上げます。さて第二話(現時点で最新話)までなんとなく読み進め、「次にくるヒロインのトレンド(死語)はきっとオタ女だな、、」などと胸の内で文芸の未来について自論を展開しつつ、小気味よい笑いと、二人のキャラクターが醸し出すそこはかとなくいい感じに結構どっぷり浸っていて、その時ふと、これは今までに無い、「語り」のまったく新しいスタイルなのではないか、、?!と思い当たりました。今、オレは、文芸の方法論の、その技術革新の、最先端の波に触れているのかも知れない!と、、。繰り返します。的外れな指摘については、あらかじめお詫び申し上げます。通常の三人称――神の視点スタイル、一人称独白体――いわゆる私小説、過去の思い出を語るスタイル、伝聞リポートスタイル、まだまだいろいろありますが、この、キツめのオタク女子がストーリーとインプレを述べて、それをカワイイ系の後輩男子が混ぜっかえす、というこのスタイル、ものすごく新しい!!と驚きを隠せません。さりげない技巧派、そんなかぎろさんならではの作品だと感じました。ストーリーも荒唐無稽で大変面白く、キャラクターも非常にいい感じ出てます。これからも更新、楽しみです。