先輩と後輩、初めて聞くラノベの話。こんなにも楽しい放課後

ちょっと下ネタが多くてアプローチが独特な根暗眼鏡文芸部の先輩女子と、毒舌な後輩男子による架空のラノベ紹介系青春ラブコメディです。

紹介されるラノベは全て存在しません。作者、文庫、ジャンルも毎回様々。あらすじを聞けばどれもオリジナリティと魅力があって「おお、これは!」と興味を惹かれること必至。読めないのが残念ですが、それだって本作の醍醐味です。それはすなわち、ラノベ(と後輩君)を愛する先輩の何とも愉快気な口上であり、初々しく興味津々な後輩の反応だけで内容を想像し続けられるということ。そうしていると、二人と同じ教室にいたような、同じ時間を過ごしていたような気持ちになれました。

二人の会話は軽妙です。丁々発止で、ユーモアがあって、同席していたら笑わずにはいられないでしょう。あなたがラノベ好きだったらもっと楽しいはず、間違いない。かように本作の描写はその巧みな会話が中心ですが、でも、それだけではない。読み返せば台詞の間にあったような、部室の臭い、衣擦れの音、窓から来る外気。どこから来るんだろう、会話から得られる情報か印象か、『ライトノベルを語っていたあの部室あの時間あの二人』が立ちのぼる得難い体験として読後に残りました。

泣ける短編集があります。武骨で勇壮なファンタジーがあります。信じられない程お下劣なのもあります。それら全部が語られて、初耳だったけど面白そうで、その話を聞くのは楽しかった。読み終えてしまった今は寂しいですが、誰かと屈託なく物語の話をしてみたくなるような前向きな気持ちにもなれました。

あの二人、この後どうなると思いますか?
作中で紹介されたラノベの内どれがお気に入りですか?
今度はあなたの話も聞かせてください。

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