合わせて15

「そうだな……自己紹介から始めようか。俺は北岡凌馬。勇者を目指している。こっちが西純貴。ホーリーラジェントを探している」


 よろしくお願いします、と恋春は頭を下げた。


「単刀直入に言うけど、転生者だよね?」


「えっ……」


 図星だったのか恋春は口を開けたり閉じたりしている。


「飯島恋春と申します。はい、転生者です。No.6の……」


 No.6……ハズレ番号か。すると純貴が勢いよく立ち上がり、恋春の方へ顔を寄せた。


「ホーリーラジェント、一緒に探さないか」


「え?」


「この世界にあるかどうかは、わからない。でも、ホーリーラジェントを探すってことは、何か目的があるんだよね」


 恋春は図星をつかれたように体を跳ねさせると、俯いた。そして、ボソリと小さな声で話し始めた。


「この世界に来て、私は衝撃を受けました。知っていますか? ウェストシティのこと」


 純貴は首を振り、凌馬はため息をついた。


「知ってるも何も……この国じゃ社会問題になってる。上は無視しているがな」


「はい。この世界には、もっとたくさん、苦しんでいる人がいると思うんです。前の世界では、全ての人を救うことなんて出来なかった。でも、この世界でホーリーラジェントを見つければ、それも可能になると、本で読んだのです」


 凌馬は顎を摩った。


「確かにホーリーラジェントは国一つ吹き飛ばせるほどのパワーを持った物体だと言われている。それも不可能でもないのか」


「じゃあ、共に行こう。ホーリーラジェントを探し出すために。断る理由なんてないだろう?」


 恋春は頷いた。この人たちと、共にホーリーラジェントを探し出す。しかし、心残りもあった。


「準備してきますから、明日の朝にここに集合しましょう」


 二人が承諾したことを確認すると、恋春はウェストシティに走った。


「え、旅に?」


 当然協力者たちは目を丸くした。


「すみません。でも、やらなきゃいけない事があるんです」


 協力者たちは顔を見合わせた。やっぱりだめかな……。

 すると、笑い声が起こった。訳もわからず困惑する恋春に、協力者たちは言った。


「私たちに止める権利はないわよ。あなたは底抜けに優しいし、胸の奥に熱いものがあるわ。大きなことを成し遂げようとしているのね」


「行きなよ! ここは俺たちに任せておけ」


 前が見えない。自然と涙が溢れていた。何ていい人たちなんだろう。


 この人たちのためにも、この世界のためにも――


 偽善かもしれない。綺麗事かもしれない。自分の、エゴかもしれない。でも、いてもたってもいられない。自分の目の前で、若い命が消えていくのは、もう嫌だった。


 恋春は少ない荷物と、ウェストシティの、皆からの贈り物をもらい、明朝、旅立ちの準備が出来た。


「いってきます……!」


 たくさんの人々に笑顔で手を振られ、恋春は待ち合わせ場所に現れた。


「来たか」


「いきましょう」


 三人は朝日とともに、旅立っていく。平原の道草たちが、純貴たちを見送るように、風になびいていた。

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一撃!!!!!!!!! 磯谷 真弘 @loveandpeace354

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