チャンス

「あの!」


 後ろから女の声がし、純貴らは振り向いた。凌馬はその少女を見て服装をすぐに整えた。


「何か御用ですか? お嬢さん」


 凌馬はかっこつけている。


「あの、ホーリーラジェントのこと、話してましたよね? 私も聞きたいんですけど……」


 純貴と凌馬は、顔を見合わせた。


「俺は構わないが……」


「大歓迎ですよ、お嬢さん」


 少女は一つ礼をすると、部屋のドアを閉めた。


「では再開するとしよう。ホーリーラジェントについて記された手記……ジム・ホーレスの手記についてはまだ謎が多い。古代リニシア語で書かれているし、暗号化されている。私がホーリーラジェントを見つけた、という文を解読するのに半年はかかったでな」


「半年、か」


 純貴は顎をさする。


「そう。リニシアは古代の国なのだが、建国二十年で滅びた幻の王国なんじゃよ。なんと言っても資料が少なすぎる」


 ホリスンは丸い顔を困り顔にした。


「それで、そのリニシアがあった場所はどこなんだ」


 ホリスンは立ち上がると、世界地図を開いて机に広げ、一つの国を指した。


「シュデイザー王国。騎士の国とも呼ばれる武力の優れた王国じゃ。何でもそこの王女が恐ろしく強いらしい」


 シュデイザー王国……! 純貴は手がかりが見つかり、思わず顔が綻んだ。


「良し、早速行こう。ありがとうございました!」


 純貴らは一礼してドアノブに手をかけた。


「待って下さい!」


 純貴はギョッとして勢いよく少女の方を向いた。少女は薄汚れたスカートを掴み、何か言おうと顔を真っ赤にしていた。


「あの……えっと……その……」


「どうしたんだ?」


「私もホーリーラジェントが欲しいんです! わーー!! 言っちゃったーー!!」


 ……何だこの子。純貴は呆け、凌馬は「そういう感じ?」と呟いている。


「とりあえずお嬢さん、話聞きますよ。な! 純貴!」


「俺でいいならいくらでも」


 二人は少女の話を聞くことにした。

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