月曜日、昼休みの屋上でひとり寝転ぶ主人公。平穏な時間に突如あらわれたのは【ヒロイン】を名のる藤倉巴。彼女はいう。主人公が【小説の主人公】にえらばれたのだと。
意味がわからない? 大丈夫です。わたしもわかっていません。そして【主人公】たるトオル君にもわかっていません。
わからないままに、巴の物語ごっこ(?)につきあうトオル君。と、読者たるわたし。
そして後半、明かされるある事実。
どんでん返しにもいろいろありますが、なんだかやたらと興奮してしまいました。リアルに声が出ました。そしてつい二度読みしてしまいました。
みなさんのレビューにもありますが、とても不思議な、唯一無二の読後感が味わえる物語です。一話完結ながら約二万字とすこしばかり長いですが、この読後感はぜひ直接体感していただきたいです。
何を書いてもネタバレになりそうですが、オススメさせてください。
お昼休みの屋上でひとり、つまらなさそうに寝ころぶ【主人公】白川徹。トオル君。
日常の中で、ある日彼の元に、【ヒロイン】を名乗る藤倉巴が現れます。
彼女は何を思い、何を期待し、何を感じて【そんな】ことを言いだしたのか。
物語としての完成度が高いです。キャラクターに共感ができます。
そして、同時に「どんでん返し」にも当たります。不意打ちです。
読後、ノスタルジックな気分が半分。やってやるぜというポジティブな気持ちが半分。
彼、これが忘れられない日々になるでしょうね。
これがセカイ系かと感動しました。
突然、「君は主人公だ!」と言われたら。
物語にとっては当たり前なのかもしれないし、人生の主人公は自分だから当然じゃないかって言う人もいるかもしれない。
でも、このお話はそんな簡単な話じゃない。
最後まで読んで欲しい作品だなって思います。
いや、最後まで読まなきゃきっと作者様の意図を汲み取れない。
なぜヒロインが主人公を指定したのか、なぜ主人公を決めるようなことをしたのか。
すごいギミックだなって思いました。
発想の勝利ですね。
あと、とある方が作っていた、景色を背景にできるキーホルダーを思い出しました。
このお話はこの世界の一瞬を切り取った、きっと今主人公は枠の外で――。
スルリと心に入ってきて、毎日が少し違って見えるような話だった。
主人公とヒロイン、その二人の関係性はよく分からない。
でも、読み進める内に何というか……その世界に心を置いてしまう感覚があるのだ。
どう言えば一番わかるだろう。
短編でありながら、長編にもなり得る話。
人生のちょっとした変化を掴み取る話。
つまらない人生が劇的に変わる話。
ほんの少しの幸せを大いなる幸せに変化できる話。
何だろう、どれも当てはまらないようで当てはまるのだ。
読み終えた後のこの気持ちは、読んだ人にしか分からない。
細やかな喜びに似ているこの感情。
あなたの日常も少しだけ変化するかもしれない。
そんな期待が生まれる物語でした。
この話はとても好きです。