最初に警告しておきます。この作品を読む前に今日の予定作業は終わらせて下さい。
そして、一気に読みましょう!
ネタバレになるので、書けない事だらけです。でも、貴方は、貴女は、騙されます。
大事な事なので二度言います。
アナタは騙されます。
あなたは、だ、ま、さ、れ、ます。
そして、この作品を読んだら彼と彼女の「次のセカイ」を知りたくなるでしょう。
書く人なら続きを書きたくなるかもしれない。
だって彼と彼女の「昼休み屋上のセカイ」はこの作品で始まり・終わるけど、彼らの別セカイはコレからも続くからです。
この作品は、一度読んでから読者同士で語り合える稀有な小説だと思います。
特にヒロインの反応部分がツボにハマる。
多くの人が読んじゃうと語り合うのが大変になりそう。
だからこそ、面白いけど!読んじゃダメー❣️
作者様ごめんなさい🙇♂️
どうして★は3つしかつけられないんだ。
最低でも5つはつけたいぞ!
これは最後まで読んだところですぐにもう一度読みたくなる。
確認せずにはいられないのだ。どこで読み間違ったのか、と。
あまり多くは語れないんだが、秀逸なのは最後。
ラストの空白行、これが素晴らし過ぎる。
『白を選ぶか黒を選ぶか』ではなく、『白を望むか黒を望むか』なのだろう。
そして『物語の主人公』は物語の外にある未来に望んだ。
感動的な事なんか何もない、心躍る展開も無い、世界的な危機もない、ごく普通の日常がつらつらと書かれているだけなのに、読み終えたときになんとも言えない密度のある感情に支配される。
これを自分で体験しないのは損だと思う!
もしも屋上で寝転がっているときに、
「君は【小説の主人公】に選ばれてしまったんだよ!」
と言われたら、あなたならどうしますか?
しかも相手は自分のことを【ヒロイン】と言って憚らない。
これが好きな女の子なら青春ラブコメに洒落込もうってものですが、【ヒロイン】こと藤倉巴さんは、距離感微妙な友達でもなんでもないあまりよく知らない女の子だったりします。しかも、この屋上でのみの世界でもって小説を完結させようとしているのです。
だから本作の【主人公】こと白川徹は、海に出掛けることも自転車のうしろに【ヒロイン】を乗せて坂道を登ることもしません。
ただ、屋上で会話を繰り広げるだけ。
だが、それが面白い。
言われてみれば、【主人公】と【ヒロイン】が居れば完了するはずの小説世界に、どうして海や自転車や朝日などと言う感動的なシーンが必要なのでしょう。……いやまあそれなりの理由がいくつもあるかとは思いますが、この作品はシーンを屋上に限定することによって、閉じた世界観をたっぷりと表現しています。徹頭徹尾、屋上以外の世界を切り離して。
この作品には一つ大掛かりな仕掛けがあって、それは物語の後半に明かされるのでここで言うわけにはいかないのですが、その事実を知ったとき、【読者】は確実に驚嘆するはず。
「やられた!」
と思う。
この、「やられた!」が実は、ストーリーとテーマに密接にリンクしており、一つの引き金になっています。これは超絶技巧と言わざるを得ない。唸りました。
小説とは、「読後に言い表せないなにかを心に抱かせるもの」だと思います。
これは、確実に、それがある。
正真正銘の小説。とくとご覧ください。