虐殺の限りを尽くす勇者たちに知恵と策略で立ち向かう謎の男

舞台は剣と魔法の世界。
魔族たちを倒して人類を救った勇者たち。

尋常ならざる戦闘力を誇る勇者シャング。
強力な魔剣を使いこなす戦士ドッペ。
冷静な判断力を持ち死人をも生き返らせる神官フーリッツ。
強力無比な魔法でどんな敵をも打ち倒すラウハ。

ここまではある意味ファンタジー世界のテンプレともいえる設定です。
しかしこの物語では「そもそも国家機関に属する軍隊でも敵わないような魔族を滅ぼすほどの力を個人が持っているとき、果たして彼らは秩序を守る存在になりえるのか」というタブーに切り込んでいます。

考えてみれば王様に「魔王を倒してくれ」と言われてそれを実行できるほどの人間が、その後で王様の命令に素直に従い続けるものなのかという疑問はあってしかるべきなのかもしれませんが、この作品ではその危惧が現実となります。

彼らはその戦闘力を行使して、略奪と殺戮を行う人類の敵になってしまうのです。
そんな勇者パーティに立ち向かうのがトルラハンという国の王弟を名乗るリコウトという男。
しかし彼自身は剣も魔法も使えない、ごく普通の人間です。

そのリコウト、話が進むにつれて彼の正体と過去の因縁が明らかになっていくのですが……。
いわゆる王道からはあえて外したピカレスクな主人公が活躍する物語です。

予測不可能な展開に引き込まれること間違いなしです。
是非ご一読を。