不穏さえも切り裂くように疾駆する、一人の女性の物語!

 主人公はレアメタルを「敵」から回収する女性ハンター。「敵」は謎の隕石により命を得た鉄くずによって構成される、スクラップワームやスクラップビーストであり、その核となっているのが、レアメタルだ。主人公は華麗に荒野を飛び、駆け、自分よりもはるかに大きい敵を粉砕する。しかし、主人公は新たな敵の出現地域を、上司に告げたことで孤立していた。新人を教育しながら日々、戦う主人公。そんな折に、急務が入る。しかしその任務中、他のスクラップビーストを従えたようなスクラップビーストが現れ、現場で謎の爆発が起こり、死者が出る。後日その爆発は自爆テロだったことが判明するが、主人公は釈然としない。何か裏がある?「戦争に勝てばスクラップ狩りなんてしなくても、レアメタルが手に入る」という言葉が、主人公の脳裏をかすめる。そして、もしも日常的に誰もが利用する脳内チップに、他人を洗脳したり、秘密裏に動かしたりすることができる機能があったら? と考えて戦慄する。それは息子に主人公が脳内チップを入れようとしていた矢先の出来事だった。
 主人公にはどうしても守りたい存在があった。今は亡き夫が残した一人息子だ。主人公はハンターとして活躍しながらも、息子の保育園の送迎や生活を成り立たせていた。息子はいつも元気いっぱい。ちょっとやんちゃだが、憎めない。
 同僚との対立で、いつも荒野で強くある主人公が弱いところを見せ、息子の存在に助けられるなど、SF要素と現代ドラマ要素が、両輪となって力強く作品を前進させていくのが分かります。そこに、誰もが――、特に女性は共感するのだと思いました。シングルマザーでありながら、カッコいいという女性像と独特の世界観は、他の追随を許さないものであり、今までになかった作品だと思います。

 是非、是非、御一読下さい!

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