第2話
と言うわけで、さっきも言った通りこの話はこれでおしまい。俺は俺で、自分のツイッターを更新するのに忙しいんだ。
今日は、少し遠出してちょっとした旅行に行ってみた。最近割と人気のスポットだったから観光客も多かったけど、景色はキレイだったし、なかなか楽しめた。もちろん、ここで撮った写真もツイッターにアップする。写り込んでいる人の顔は、ちゃんと処理しないとな。
だが作業をしている途中、ふと俺の手が止まった。写り込んだ何人かの見知らぬ人物。その中に、一際目立っ格好の男がいた。赤いシャツに赤いズボンを履いた、全身赤い色をした男が。
「こいつ、まさか……」
頭によぎった嫌な予感を振り払うように、自分に言い聞かせる。こいつが、あの赤い男の訳がない。わざわざ俺のところに来る理由なんてないはずだ。
だがいくらそう思っても、恐怖は一向になくならない。
不安に思って、念のため今までアップした写真も確認してみる。もしかしたら、このうちいくつかにはこの赤の男が写っているんじゃないか。そんな風に思った。
だがその考えは外れていた。
「嘘だろ……」
いくつかなんてものじゃない。今まであげていた写真のほとんどに、その赤い男は小さく写り込んでいた。
どうして今まで気づかなかったんだろう。アップする際に、一応写真は全部チェックしていると言うのに。
さらに遡って調べてみると、最初にこの赤い男が俺のツイッターに現れたのは、ちょうど俺があの女性のツイッターで赤い男を指摘した翌日だった。
いくらツイッターは身バレするものと言っても、こんなに早く特定できるものなのだろうか。
いったいこいつは何者なんだ。
そんな得体のしれない恐怖を感じた時、俺のツイッターに一件のメッセージが投稿された。
その内容はこうだ。
『こいつって、赤のストーカーじゃないか? これ書いたってことは、俺もヤバいかも』
赤のストーカー。見たまんまの名前が、この一文を見る限り、なんだかある程度知られている存在のようにも思える。それに、俺もヤバいとはどういう事だろう。
気になった俺は、ネットの検索画面を開いて、『赤のストーカー』と打ってみる。
すると一番上に表示されたのは、とある都市伝説のサイトだった。
口避け女や人面件と言った、比較的新しくできた妖怪や怪異を紹介しているそのサイトの中に、『赤のストーカー』も名を連ねていた。
詳しく読んでみると、そこにはこう書かれていた。
『上から下まで全身赤の服を身に纏っていて、特定の人のブログやツイッターの写真に写り込む。どれだけ回りにいないことを確認して写真を撮っても、いざネットにアップすると写っている』
まさに、今俺のツイッターに出ている赤い男と同じだ。得体のしれない不気味さは感じていたが、まさかこんな化け物みたいなヤツだったと言うのか。
いや、こんなのが実在するわけはない。きっと、この噂を知っている誰かがマネをしているのだろう。どっちにしたって、気味が悪いことに変わりはないが。
だがよく見ると、この『赤のストーカー』の説明にはさらに続きがあった。
『もしもブログやツイッターでこいつを見ても、決してそれを指摘してはいけない。指摘したら、赤のストーカーはブログやツイッターの持ち主を殺して、次は指摘した人物につきまとう』
なんだって…………。
俺はあの時、確かにあの女性のツイッターで、赤のストーカーの事を指摘した。そして今、赤のストーカーは俺のところに来ている。
「じゃあ、あの女の人は……」
俺が指摘したから殺された?
今まで考えないようにしていた罪悪感が、一気に膨れ上がる。だが次の瞬間、そんな思いもたちまち頭の隅に追いやられた。もっとヤバいことに気づいたからだ。
「俺、指摘されたよな」
たった今、ツイッターで赤いストーカーについて言及されたばかりだ。指摘されたら、そのツイッターの持ち主は殺される。そんな、たった今見たばかりの一文が頭をよぎる。
その時、ツイッターに新しいメッセージが投稿されたことに気づく。恐る恐るそれを確認してみると、メッセージの内容はこうだった。
『バレたか』
そして次の瞬間、今この家には俺以外誰もいないはずなのに、なぜか部屋のドアがゆっくりと開くのが見えた。
そしてそこから中に入ってきたのは、全身を赤い服でコーディネートした男だった。
ネットで見つけたストーカー【カクヨム甲子園バージョン】 無月兄 @tukuyomimutuki
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