魔法学校を卒業した魔女のシルヴェスの目標は猫カフェを開くこと。しかし、この国では魔女は怪しげな存在として嫌われているし、猫もその魔女の使いとして嫌われている。しかも魔女といってもシルヴェスが使える魔法は黒猫に変身することだけ……。
ここまで猫カフェに向いてない状況もそうそうないのだが、もっと猫の良さを知ってもらいたいシルヴェスは学生時代の友人の協力も借りつつ大奮闘。しかし、国内では一部の住人による猫の殺害が横行し、さらにその猫を殺す住人に報復する謎の魔法使いが暗躍していて……。
猫カフェ経営ということで一見お仕事もののように思える本作だが、メインとなるのは経営というよりも、どうやって人間と猫を和解させるか。猫の良さを人々に伝えるため、あの手この手で奮闘するシルヴェスの姿は読んでいて応援したくなる。その一方で猫を巡って起きる謎の魔法使いによる殺人事件の謎もしっかり追っているのもお見事。猫の可愛さに気を取られてばかりいると、ラストで次々と明かされる真相の数々に驚くこと必至です!
(「動物と暮らす」4選/文=柿崎 憲)
タイトルの猫カフェという単語から、ほのぼのとした日常系のファンタジーなのかなぁと想像するのですが、蓋を開けてみると意外にダークな部分もあって、優しいだけの物語ではありません。かといっておどろおどろしい、血生臭い感じでもないので、そう構えることはないかと。(猫好きには悲しくなるシーンもありますが、ストーリー上必要な描写ですので)
序盤は猫カフェ開店に向けてシルヴェスが街の皆と少しずつ距離を縮めていく様子が描かれています。猫好き先輩とか魔法学校の同級生とかパン屋の王子とか宮廷魔道士とか(あと猫も!)、沢山の魔法使いや人間たちが登場するなかで、魔女狩りの行われている街の様子や迫害される魔法使いなどこの世界の背景も上手に織り込まれていて世界観がすんなりと理解できます。
猫カフェオープン後は一気に物語が加速するので、きっとあっという間に読み終わるかもしれませんね!
個人的に一番のお気に入りは第18話! シルヴェスの今までの苦労が報われた回で、もう終始ほっこりした気分になりました。
そこからラストへは、今までの伏線がどん! どどん!! どどどーん!!! と一気に回収されていき、気持ちが最高潮に高まった中でエピローグを迎えたので、個人的にはもう少し読みたい気もしました(単なる希望です)。
ラストはきれいに纏まって終わってますのでご安心を!
猫好きなら「わかるー!」と頷ける部分もあるので、そういうのも感じられてより面白かったです。
香箱座り、たまらんですよね(*^-^*)
※作品は絶対評価したいので星の数は適当です(全部星二つです)。
※9話まで読んだ感想です。
※最後まで読んだ感想を追加しました。
そういえば、ジジは話さなくなるんだったなぁ、なんて往年の名作を思い浮かべながら読んでいました。
こちらは、黒猫になれる新米魔女の奮闘記。一人の女の子が猫カフェ開業にあくせくせっせするビルドゥングスロマンです。
舞台は、魔女狩りもはびこり、猫焼きが横行し、ギャングも半グレの暴行集団もいる、なかなかシリアス世紀末な街。猫は徒党を組み、身を守るべくカラス仮面を用心棒に。メルヘンチックですが、やってることはこちらも結構エグ味マシマシです。
※※
個人的な面白ポイントと偏見を多分に含んだ人物紹介。話半分でお読みください。
〇シルヴェス―――愛称シル。猫になれる変身魔法の使い手だけど、それしか使えない。気合一発の一芸卒業をかました猛者。今は猫カフェのスタートアップのためのファンドとマーケティングとリクルートをアジェンダしてる最中(←ごめんなさい意味分かってません)。猫になると猫語を話せるが、人間のときからちょっと猫っぽい。人たらし。猫をモフり猫になりモフられ頑張っている。
〇ハバ―――シルの下宿先のマスター。クラシカルなバーを営むナイスミドル。シルについて、露骨な伏線を張ってくるところもナイス。期待している。
〇アーサー―――ハバのところを縄張りにする猫。人間とは適切な距離を保つ。孤高の獣らしい独歩自立の精神を涵養しているが、ひとたび餌を出されれば女子会の肴になることもいとわない好漢。
〇猫好きネットワーク―――シルが学園で作った文字通りのサークル。その全容は未だ把握できず。確認できているイカしたメンバーを紹介する。
・フェル―――シルの同窓生でガラス職人。無口で人見知り。芸術家肌。猫をいじめる者には「お前もガラス細工と一緒に炉にいれてやろうか」と豹変するかもしれない(しません)。
・エリス―――ハーブ屋。大人っぽい。恐らく姉貴分。そして恐らく割と自由なシルとフェルに振り回される苦労人の気配がする。猫をいじめる輩には「お前もハーブ畑の肥料に」と(言いません)。
以下、増える予定。
〇ラーク―――イケメンその一。宮廷魔道士。初登場時は、なかなかの騎士道ムーブで話題をさらうが、イケメンは増えた。今後の活躍に期待。猫は嫌い。シルにはツン気味なちょいデレを見せる可愛い奴。
〇サイベル―――イケメンその二。パン屋さん。金髪碧眼眉目秀麗。シルの猫カフェと業務提携を結ぶ予定。割と人間に対してはドライで「こいつ、カラス仮面なんじゃね?」とレビュー主は怪しんでいるが、大抵こういう予想は当たらないので、きっと笑われるだろう。笑われて行こうじゃねぇか。
可愛く、ダークに、シリアスになり切らずストーリーをしっかりと展開させていく良作です。続きを楽しみにしています。
※完結追記
動物写真家の岩合光昭さんは、猫を「平和な動物」と称しました。
のん気、気まま、ねぼすけ、というイメージとはまた別に、彼らなりの野生ってものもあって、人間を含めた、別の動物と戦ってきた歴史があります。
そこらへんの厳しさも描きつつ、猫よりも猫っぽい魔法使いの少女と猫によって、世界は少しだけ平和になります。
もふもふ革命は、ここに相成ったわけです。
タイトルからは軽いタッチのコメディの印象を受けますが、その実、根底に流れる要素はとてもシリアス。中世の魔女狩りを下敷きにしていて、時に目を覆いたくなるような残酷な描写も登場します。
しかしそれを重たく感じさせないさらりとした筆致と、主人公シルヴェスの明るく前向きなキャラクターで、物語はテンポ良く進みます。
更にこの作品の大きな特徴であり魅力が登場する猫たちの描写!
猫は人間のように表情で芝居をしたり感情を表すことはできません。しかし動物学を専攻していらっしゃる作者の知識と、猫に対する細やかな視線により、猫が本当に生き生きと描かれています。猫好きの方ならなお、「そうそう!こういう動きするよね~!」と頷きたくなることでしょう。
魔女と猫に対する偏見の根強い街で、“猫にしかなれない魔女”シルヴェスがどう人々の心を変えていくのか、この先がたのしみです!
魔法使いと猫が忌み嫌われる世界をしっかり描き、その中で猫カフェという異端の発想を実現させようという物語。
一方で、一部の猫たちと魔法使いはきな臭い動きを見せており……彼らとの対決、あるいは和解も描かれるのだろうかと、期待が膨らむ。
魔女狩りの世界をしっかり描いており、それを見せる手際もかなりのもの。
この世界をもっと知り、そしてどのように覆されていくのか、知りたいと願わずにはいられない。
難を述べるなら、会話と描写の密度に偏りがあり、序盤で登場人物がどっさり顔見せする。
ここから彼ら一人一人に、丁寧に、順序よく焦点を当てて、キャラの個性と魅力を引き出してくれることを期待したい。
猫カフェという発想はどこから生まれたのか。また、どのように実現していくのか、見守っていきたい。
最後に……猫の生態と魅力がしっかり描かれています。猫たち、かわいいです。
自分が猫好きであるから、という色眼鏡は否定できないが、
とても面白い!
それほど難解な言葉や、表現が少なく、短文でリズムもいい。
猫に関する描写が非常に細やかで、参考になります。
また、台詞の一つ一つがその話者の性格を反映していて、頭の中でキャラクター像を作りやすい。
転生した主人公が前世の知識を使って、とかでもなく。
不器用でも、自分の好きなことに真っ直ぐな主人公が、
社会の闇に直面しながらも、夢を貫こうと努力する姿勢も、
この作品の良いところではないかと思います。
カクヨムでそれほど長くもないのに、物語に引き込まれたのは初めてです!
自信をもって星3を付けて評価させていただきます!