鋼鉄の右腕は嗤う世界を夢見る

西木 草成


 首を伐る音が響く。

 首を伐る音が響く。

 首を伐る音が響く。

 友の、

 愛した人の、

 信頼した人の、

 仕えた人の、

 他人の、

 知人の、

 時計の秒針の如く、それは規則正しく聞こえて来る。命の消される音がする。守れなかった者の悲鳴が聞こえる。救えなかった人の怨嗟が聞こえる。穴だらけのこの土地が、かつて守りたかったもの。だが、敵軍の兵器が縦横無尽に駆け巡り、かつての美しい草原の面影などどこにもなかった。

 次の瞬間、右腕から先の感覚がなくなった。

 プツリと何かが切れるような音が頭蓋をぶち抜いて目が大きく見開かれる。痛みなど感じなかった、しかし心臓の奥底を締め付けるような苦しみは自然と頭を右側へと回転させる。

「うわぁぁあああぁあっっっっ! 腕、腕っ! 俺の腕っ!」

 血など流れておらず、先ほどまで剣を握っていたはずの右腕は壊れたおもちゃのように地面に転がって音もなく死んでいた。

「やめろ……やめてくれっ!」

 暗闇が、ニタリと笑った。

『ここで、逃げるのかね?』

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