第15話
#15...死霊の谷の攻防....空から(1)
歩兵部隊 部隊長のテスが紅い閃光を瞳(め)にし肩の荷を下ろし、一息つくかつかないかと言う頃には、イデアル公国 総指揮官 赤眼のリンクスが、テスの目の前に現れ戦況状況の確認をする。歩兵部隊 部隊長のテスは、リンクスに一礼し、戦況状況を報告し始める。
「オプスキュリテの追手が予想より早く、数も多いので歩兵部隊だけでは、食い止める事が難しい状況です。」簡潔に伝えた。それとリンクスが来てくれた事で、オプスキュリテの追手を食い止める事が出来ると確信している故を伝える。リンクスも頷き後方の迫り来るオプスキュリテの追手を駆逐するべく戦闘態勢に入ろうとしたその刹那、テスとリンクスの頭上を飛びイデアル軍の前方に向かって走り去るオプスキュリテ軍 空殺機動隊の姿が見て取れた。リンクスは、自分の甘さに失望した。まさか空からも攻めてくるとは.....テスも空を飛んで行くオプスキュリテ軍を見て愕然としリンクスの指示を待つ。
迫り来るオプスキュリテの追手を横目にリンクスは、テスに第三形態の陣 (囲い込む陣形)を組む様に歩兵部隊に指示し、前方に居る作戦参謀のオルドーに携帯端末で連絡した。「オルドーか、私だ!オプスキュリテの追手も早いが今、オプスキュリテの空殺機動隊が前方に向かって行った所だ!リゼルが乗っているキャリーを別動隊として先行させ、いち早くソウルシェルに運ぶように手配してくれ!」と早口で、オルドーに指示を出す。オルドーも「分かりました。すぐ取り掛かります。前方は、私達に任せて下さい。なんとかしますので!」とオルドーが端末を切ろうとしたので、リンクスが「オルドー!このまま、クルスに繋いでくれ!」と急ぎばやにオルドーに頼んだ。オルドーは、「分かりました。今繋ぎます。」と言ってクルスに端末を繋いだ。そして直ぐにリンクスの端末からこの状況下では、考えられない位明るい声が聞こえた。「はーい!こちらクルス・アスル!赤眼の大将から連絡なんて珍しいね!どうしました?」と緊張感のない声が聞こえる。リンクスは、「もうすぐそっちにオプスキュリテの空殺機動隊が、行く!お前達の能力が、頼みの綱だからな!頼むぞ!」とイデアル軍 空挺班にイデアル公国 総指揮官 赤眼のリンクス直々の伝令にも、リンクスの端末から聞こえてくる声は、「赤眼の大将が、やれって言えばやりますよ!でも俺達は、ヒューマンノイドと違って飛ぶ高さや時間に限界がありますんで、死なない程度に頑張りますよ!赤眼の大将がきてくれるまでは、なんとかね 持たせますよ!」とこの状況下でやる気があるのか無いのか分からない返事がする。リンクスは、「お前なぁ!」と思いながら「頼むぞ。」と念を推して端末を切り後方支援にむけ紅い閃光に身を包んだ。
クルス・アスルは、イデアル公国 空挺班の班長でありイデアル軍の中では、空の戦闘を熟知しており 指揮を取る事にも秀でている。空挺班の中では、クルスを慕う者も多い。今回の作戦会議で、空の攻防は、少ないと思われていたため空挺班の参加者は、少なく装備や規模も最小限の参戦であり クルス・アスルが参加するから今回の作戦に参加した数十名だけである。クルスは、ああいう性格で、出世欲もない為班長に留まっているがリンクスへの忠誠心は、以前 空の戦闘で、リンクスに命を救われている事で証明されている。
クルスは、空挺班の仲間達に大声で「お前ら、仕事だぞー!赤眼の大将から直々の
命令だ、もうすぐオプスキュリテの空殺機動隊がやってくる!赤眼の大将が来る前に片づけるから気合い入れて行けよ!」とバックパック(推進維持装置)を背負いながらどう戦うか作戦を考える。そしてオプスキュリテの空殺機動隊が来るであろう方の青い空に目を向ける。
リンクスからの指示通りリゼルを別動隊として先行させるべく作戦参謀のオルドーは、リゼルが乗っているキャリーの前に来ていた。オルドーは、軍医であるチェルシーに、声を掛けた。「チェルシー!チェルシージェシカ軍医、いますか?」と大きい声で、呼びかけた。するとリゼルが入っている生命維持装置のつまみを操作しながら面倒くさそうに、そしてかなり不機嫌な感じでボサボサの髪を掻きながら「そんな大声で、人の名前呼ばなくても聞こえるよ!オルドー、アンタが来るって事は、いい話じゃなさそうだね。どうしたんだい?」と助手のリスカに生命維持装置の操作を代わってキャリーからでてきた。オルドーは、出てきたチェルシーに、リゼルの命を優先するべく別動隊として隊列から離れイデアルの本拠地であるソウルシェルに行くように伝えた。チェルシーは、その話を聞いて「別動隊として行動するのはいいけど、医療部隊は、大丈夫なのかい?私とリスカは、リゼルにずっとついている形になるよ?あと護衛の事と、ドライバーは、デンジのおっさんかい?」とちょっと嫌そうにオルドーに聞いた。オルドーは、「ええ。ドライバーは、デンジさんに頼む予定です。こういう時は、デンジさんしかいないでしょ!医療部隊の方は、残りの人間でなんとかやってもらうしかないですね。それと護衛の方は、二番隊突撃兵団の十二名にお願いします。」とチェルシーに別動隊の指示を説明する。チェルシーは、「護衛と医療部隊の方は、いいけど....デンジのおっさんねぇ...あのおっさん、ハンドル握ると人がかわるから面倒くさいんだよね!」とチェルシーは、愚痴をこぼす。オルドーも苦笑いしながらも「運転技術は、信用できます。この窮地を脱出するには、デンジさんしか適任者は居ませんよ。」とチェルシーを納得させる。チェルシーも観念したのか「分かった。分かったよ!」と納得して別動隊の準備に入った。オルドーは、チェルシーに笑みを返して急ぎばやに、次の指示を出す為走り出した。
クルス達 イデアル公国 空挺班は、準備を整えオプスキュリテの空殺機動隊がくるのを待ち構える。クルス・アスルは、二十数名の空挺班一人一人を遠くから目で記憶する様に顔を見つめる。それはこの戦いで死する者も出るかもしれないからだった。一応イデアル公国 空挺班の班長と言う立場上、仲間の事も心配しなければ行けず、クルスは、「一人で戦う方がよっぽど、気が楽だな。」と小さな声で呟いた。クルスは、表向きは、いい加減で、やる気が無さそうな態度は、取っているが人一倍仲間を大切に考える為、責任を負う役職に就こうとは思わないのである。そして二十数名の空挺班に大声で集合を掛けた。全員クルスの前に整列し、クルスに注目する。クルスは、「これから作戦を伝える!絶対に死ぬな!死ぬ前にこの戦闘から離脱して逃げろ!それから一人で戦うな!必ず二人以上で、囲んで確実に数を減らせ!以上。」と簡単な命令を出した直後イデアル公国 空挺班のエイミーが、「班長!この人数なのに本当に、逃げちゃっていいんすか?後で怒られるの班長すよ?」とちゃちを入れ、イデアル公国 空挺班達の笑いを誘う。クルスも笑いながら「お前は、女なんだから、いの一番に逃げろ!」とさらにイデアル公国 空挺班達の笑いを誘い 大爆笑が起こる。エイミーは、「男女差別は、時代遅れすよ!」と口を膨らませ 顔を赤くして叫ぶ。クルスは、笑いながら 大きく伸びをして「それじゃいっちょ 死にに行きますか?」と青い空が黒い点になっている所を凝視して青い空に先頭を切って飛び立った。
歩兵部隊 部隊長のテスは、リンクスの指示通り迅速に第三形態の陣を作り、オプスキュリテの追手を囲い込む形を取り戦闘に入って行く。歩兵部隊 部隊長のテスは、オプスキュリテの追手の軍の一人を瞬殺した手答えに、「大した事はないな。」と呟き、これなら何とかなりそうだと確信する。そこに前線に指示を出していたリンクスが遅れて 紅い閃光を纏い高速でテスの横にやって来て「オプスキュリテの追手は、どんな感じだ。」とテスに確認する。テスは、「多分 オプスキュリテは、本気で我々を止めようとはして無さそうですね。下級クラスの戦士だと思います。」とオプスキュリテの追手の手答えをリンクスに伝えた。そしてリンクスがオプスキュリテの下級戦士を三人瞬殺して テスに「その様だな!」と答えたと同時にグオーと言うエンジンの音が聞こえ リンクスとテスはその音の方に釘付けになりつつ、オプスキュリテの下級戦士を薙ぎ払いながらリンクスは、二度目の自分の甘さに愕然とする。オプスキュリテの追手の下級戦士は、足留めの為であり 空殺機動隊は、体を空の戦闘用に改造された戦士達だが、まさか空母級の飛行船が頭上を通り過ぎようとしている。リンクスは、戦いながら、作戦参謀のオルドーに連絡を入れる。「どうかしましたか?リンクス司令」と返事が聞こえ リンクスは、戦いながら急ぎばやに「オルドー!大変な事が起きた!今オプスキュリテの空母級の飛行船がそっちに向かった!後続の俺達は、気にするな!一刻も早く死霊の谷を抜けて先へ進め!死霊の谷で空から一気に俺達を全滅させようとしている!クルス達にも無理せず撤退する様に指示を!それからリゼルの別動隊も急がせろ!とにかく撤退を急いでくれ!」と怒鳴る様にオルドーに話す。オルドーも「今度は、飛行船ですか!分かりました。撤退を急がせ なるべく犠牲がでない様に対処します。ソウルシェルにも援軍を要請しておきます。リンクス司令もご無事で!」と連絡を切る。リンクスは、隣で戦っているテスに向かって「考えが甘かったな!ここを早く片付けて本体と合流しよう!」それを聞いたテスが「了解しました。早く片付けましょう!」と答えて敵を倒して行く。リンクスは、紅い閃光を更に紅くし
オプスキュリテの下級戦士達を駆逐するため戦闘に集中して行く。......
クルス・アスルが空に飛びホバリングをして迫り来るオプスキュリテの空殺機動隊と戦闘を始めようとした時、オルドーから連絡が、入る。クルスは「これからおっ始めようとしてる時に何すか?テンション下がるすよ!」と返事をするとオルドーが「悪いな!こっちもいろいろあるんだ!たった今リンクス司令から報告がありオプスキュリテの空母級の飛行船がこっちに向かっている!空殺機動隊を足留めしつつ一刻も早く死霊の谷を抜ける様に!撤退優先で作戦を立て直してくれ!いいな!頼むよ!」クルスも「空母級の飛行船て!こっちは、戦闘機も無いんすよ!分かりました。こっちも空殺機動隊とそこそこやったら撤退させてもらいますよ!まだ死にたく無いすから!」とその返事にオルドーは、「そうしてくれ!死ぬなよ!」と答えて連絡を切った。クルスは、迫る空殺機動隊を睨みながら、イデアル公国 空挺班の戦士達に「今の通信は、聞こえてたよな!お偉いさんから逃げろってお許しが直々に出たんだ!オプスキュリテ 空殺機動隊をやれるだけやって撤退するぞ!作戦通りだ!いっちょ かましたれ!」と全員に告げ先陣を切って飛び立った。
オルドーは、クルスとの通信を切りつつデンジと二番隊突撃兵団十二人を召集して別動隊として行動する事を伝える。オルドーは、「デンジさん リゼル二番隊隊長が乗っている生命維持装置の付いているキャリーをいち早くイデアル公国の本拠地であるソウルシェルに運ぶのが今回の司令です。くれぐれもリゼル二番隊隊長とチェルシー軍医と助手のリスカに もしもの事が無い様にお願いします。」それから二番隊突撃兵団 突撃隊長のセーマを中心に見ながら「二番隊突撃兵団の貴方達には、その護衛としてキャリーを守っていただきたい。」と伝える。突撃隊長のセーマが、「リゼル隊長は、命に換えても護りますよ!誰に言われなくてもね。」と二番隊突撃兵団の総意として話す。デンジも「ワシがしっかりソウルシェルに運んでやるよ。」と一言言って早速出発する為運転席に乗り込みつつチェルシー軍医とリスカに挨拶した。チェルシーは、あからさまに嫌そうな態度だが諦めているのか何も言わない。リスカは、愛想笑いで誤魔化している。二番隊突撃兵団十二人は、バイクと車に分かれてキャリーの後方を重点的に守る様に周りを囲んでいる。デンジが運転席に付きゴーグルをし出発の準備が出来たのを見計らって オルドーは、デンジに「くれぐれも頼みます。デンジさん」と声をかけた。デンジは、「オイ!誰に言ってんだ!俺に運べない物なんかねぇんだよ!こっちの事よりテメェの心配しろてんだ!じゃ行くからよ。」とさっきまでとは、別人の様にべらんめぇ口調で出発して行ってしまった。オルドーは、少し不安になりつつも そんなキャリーを見送り本隊の撤退と死霊の谷を早急に突破する為に次の指示を出しにまた走り出した。
...............to be continued
Pentas〜流星graffiti〜 カイエ @kaie-
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