言葉の棘は廻りまわって自分を刺す。

会員たちが自作の「詩」を投稿しそれを互いに評価しあう詩の投稿サイト『ポエむら』(どこかで見たような仕組みのサイトだ……)。そのサイトで千鶴は「主が辛口コメント書きます」という企画を始める。「なれ合いのコメントではなく本音の感想が欲しい」。そんな需要に応えるべく始まったこの企画。最初の方は好評で千鶴もノリノリで辛口コメントを書きこんでいたが、ある時千鶴の辛口コメントに対して痛烈な返信が送られてきて……。

ネット上の些細なやりとりをきっかけに日常の歯車が徐々にズレていく……というのが主なストーリーだが、本作はそれよりなにより千鶴と彼女のアンチであるPotter5のやりとりのインパクトが非常に大きい。正論といちゃもんを上手いこと織り交ぜながら、他人を煽っていくPotter5のスタイルは人によっては大いに参考になることだろう。

ちなみに本作で一番印象に残ったフレーズはこちら。「いくら『辛くても』まずいカレーはまずい。売れるには、『辛くてうまい』カレーを作らなくてはならない。言葉も同じですよ。ちゃんと、味のある『辛口』コメントをしましょう。」

煽り野郎の発言だし別に自分が言われているわけではないのに、ついこちらも襟を正しくなってしまうから不思議なものだ。


(「インターネットの向こう側」4選/文=柿崎 憲)

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