会員たちが自作の「詩」を投稿しそれを互いに評価しあう詩の投稿サイト『ポエむら』(どこかで見たような仕組みのサイトだ……)。そのサイトで千鶴は「主が辛口コメント書きます」という企画を始める。「なれ合いのコメントではなく本音の感想が欲しい」。そんな需要に応えるべく始まったこの企画。最初の方は好評で千鶴もノリノリで辛口コメントを書きこんでいたが、ある時千鶴の辛口コメントに対して痛烈な返信が送られてきて……。
ネット上の些細なやりとりをきっかけに日常の歯車が徐々にズレていく……というのが主なストーリーだが、本作はそれよりなにより千鶴と彼女のアンチであるPotter5のやりとりのインパクトが非常に大きい。正論といちゃもんを上手いこと織り交ぜながら、他人を煽っていくPotter5のスタイルは人によっては大いに参考になることだろう。
ちなみに本作で一番印象に残ったフレーズはこちら。「いくら『辛くても』まずいカレーはまずい。売れるには、『辛くてうまい』カレーを作らなくてはならない。言葉も同じですよ。ちゃんと、味のある『辛口』コメントをしましょう。」
煽り野郎の発言だし別に自分が言われているわけではないのに、ついこちらも襟を正しくなってしまうから不思議なものだ。
(「インターネットの向こう側」4選/文=柿崎 憲)
主人公は小説サイトの辛口コメント企画に参加して、読了した作品をバッサリと批評していく女性ユーザー。
しかし彼女のコメントに対して噛みついてくるユーザーが現れて、激しいストレスを感じてしまいます。そこで彼女は、つい他の古くからの友人とネット上のやり取りで陰口をたたいてしまうのですが……。
SNSをやっている方なら誰しも心に刺さるものがあると思います。
自分が発信したものに対して肯定的な人間、否定的な人間が現れて、承認欲求を満たし、あるいはやり場のない怒りを感じてどうしようもない気持ちにさせられる。
しかし、承認欲求を満たすことにとらわれた先にも、自分を批判した人間に対して攻撃性をむき出しにした先にも幸せな結末はないのかもしれません。
テンポよく展開していくストーリーも読みやすく、最後まで一気に楽しむことができました。
インターネット上の人間トラブルを見事に風刺して見せた良作です。
是非ご一読を。