多くの方が素直なレビューを書いておられますので、少しひねくれた観点から。
この作品を読了後、私は子供の頃に読んだ昔話を思い出しました。「猿むこ」という昔話で、爺さまが、畑仕事を手伝ってくれた猿に、お礼に娘の一人を嫁にやるとつい口を滑らせるのですが、爺さまを想って約束通り嫁に行くことにした末の娘が機転を利かせて猿を溺れ死なせ、爺さまのもとに戻って来て幸せに暮らす、という物語です。
川に落とされ、流れ死のうとする猿は、最期に娘に歌を詠みます。
『川に流るる猿の命は惜しくはなけれどあとに残りし姫恋しや』
この作品を最後まで読まれた方であれば、私が誰を思ってこのような昔話を思い出したのかわかるでしょう。そして、しんみりと物悲しいこの読後感が私にとってどういったものであるかは、星三つの評価からご理解いただけるかと思います。
どこまでも丁寧に描かれた物語であるから、多面的な解釈が可能であり、その分だけ様々な感動があるのだと思います。
たいへん面白かったです。
読み進めている間、何度こう思ったことか……。
この物語は、様々な事情で夫を三度亡くした未亡人の香淑と、とある呪いに苦しむ金持ち美青年の榮晋が結婚する所から始まるわけなのですが……まあ、そこから素直に「即ラブラブ~」の東方ラブストーリー開幕とはいかないんですね、これが。
それどころかこの美青年、見事に色々こじらせておりまして、香淑に滅茶苦茶冷たくあたってくるんですよ。ツンツンしまくりなんですよ。
そのくせ、唇はねっとり奪ってくるんですよ。ツンキス男ですよ。美青年じゃなかったら即逮捕案件ですわ、これは。
一方で、年上女房の香淑。これがまたねー、健気でいい娘なんですよ。
結婚するたび夫が死んじゃうってことで、世間では色々悪評が立ってるんですけど、実物は滅茶苦茶いい娘なんですよ。
それなのに……榮晋、この野郎!
「事情があるのは分かるが、どんだけツンツンしとんじゃ! いい加減さっさとデレを見せろ!」と、読んでいる間、私の心は荒ぶるばかりでございました。
でもタグにもある通り、物語はちゃんとハッピーエンドを迎えるので、ご安心を。
溜まりに溜まった榮晋に対するフラスト・デレーションが解消された瞬間には、「うおっしゃああああ!」と、天に拳を突きあげたくなること請け合いでございます。これも、作者様の計算の内でしょうか……。
そしてこのデレ・カタルシスに加えて、登場人物のキャラメイキングが抜群に素晴らしい。
なんといっても、香淑。香淑が可愛い。いい娘すぎて可愛い。もういっそ、ウチに嫁に来てほしいくらい可愛い。
そして、マスコットキャラ的な晴喜も可愛い。犬コロ癒されて可愛い。
カッコいい成分的にも、髭ダンディ兄貴分の道士やら、狐のイケメンパパやら、魅力的なメンズが登場し、油断してるとまんまと乙女ゲーの罠に嵌ってしまいます。
……ただし榮晋。貴様は美青年だけど、デレるまで許さん。
また作品全体を通して、作者様の舞台描写が巧みでいらっしゃること。
語句の選び方が良いんですかねえ。事細かな説明文章が無くても、中華風な世界観がススーッと浮かび上がってきちゃいます。
「ローマもいいけど、中華もね!」と優し気に微笑む作者様の引き出しの多さには、感嘆するばかりでした。
私を狐パパ属性という新たな属性に目覚めさせてくれたことに感謝の気持ちを込めて、「Bravo! 我愛你!」と、称賛の言葉をお送りしたいと思います。
主人公の香淑は、心の優しい美しい女性なのですが、ひとつ欠点があります。それは男運がないこと。
いままで三度嫁に行き、その三度とも夫となった男性が亡くなられています。いわゆる✖3の未亡人。すでに三十路。おまけに、三度も嫁に行ったはずなのに、いまだに処女。
すっかりこじれてしまっています。
いっぽう若くして実力のある商人でもある榮晋は、この香淑を是非にと懇願して嫁に貰います。きっと彼は香淑の素晴らしい美貌と優しい性格に心惹かれたのでしょう、と思いきや、彼が注目したのは、夫が三度も亡くなっているという事実だったのです。
実は彼と彼の家には、ある秘密があり、その秘密と、夫を三度も亡くしたという香淑は、榮晋にとって利益の有る相手だったのです。
これは栄華を得るために化け物の力を頼ってしまった先人たちと、そのために人生を狂わされた若者たちの、なんともこじれた恋愛譚です。
しかも、かなりアダルトな内容です。
主人公の香淑は、三十路の未亡人という響きからしてエロい設定であるのに、いまだ処女。でも、そうとは思っていない榮晋は、かなりの勘違いもあって、初心な彼女にディープなキスやハードなペッティングを。
一方、清楚なヒロイン香淑も、年下イケメンの榮晋に激しく罵倒されたりセクハラされたりするんですが、巨大な母性でもってそれを受け入れようとします。ちょっとドMかもしれません。この香淑の、一見清楚な聖女とみせておいてからの色っぽさがたまりません。若い娘には絶対出せない色気むんむん。俗にいうミルフ・ヒロインですね。
本作は、この、いろいろこじらせてしまった大人の男女の恋愛と、家系にからむ妖との戦いの物語なのです。が、なかなか大人向けの内容です。
女性視点ではじれじれの恋愛ものですが、年上女性好きの男子にもおすすめです。
どうぞ、清純派香淑さんの激しい艶技をお楽しみください。
香淑の嫁入りで魅せる圧倒的な描写力、華やかで美しい作品世界に冒頭から引き込まれました。
可憐ながら強い芯を持ったヒロイン。
主人の役に立ちたいという健気な姿。
香淑はステキな女性です。
香淑を女狐と思い込み、冷たい態度をとる夫、榮晋ですがその氷のような美貌は徐々に溶かされて……。
2人の新婚生活は順風満帆というわけにはいきません。
というのも榮晋には大きな秘密が隠されていました。
香淑も4度目の嫁入りですからね、女として幸せになりたいものですよね。しかし、榮晋の抱える秘密ゆえに香淑は幸せになれそうにありません。
香淑の思いはやがて榮晋を動かし、周囲をも巻き込んで納得のラストへと向かいます。
今度こそ香淑は夫と添い遂げたい。
ぜひラストまで見届けて下さい。
私、香淑。巷では『夫君殺しの女狐』なんて呼ばれてるわ。
それもそのはず、私を娶った旦那様がことごとく死んじゃってね。
え? 犯人はお前だって? 冗談はよしてちょうだい。
私だって、幸せな結婚を夢見てるんだから。
ああ、まだ見ぬ王子様は……え? 結婚?
どこの物好き――いえ、我が愛しの榮晋様~(はーと
なのに、何? この不穏な空気は?
私、またトンデモナイ所に嫁いできちゃったみたい。
何度も言わせないで。
私は幸せな結婚がしたいだけなの~~~~!
【本編とはまったく(でもないかも)関係ありません】
~読者の独断による五段階評価(超えてるやん)
香淑の夢見度 ★★★★★
榮晋の噂に流され度 ★★★★★★
道玄の生臭道士度 ★★★★★★★★★★
四度目の結婚を果たした主人公の香淑。なぜ四度も結婚する事になったのかと言うと、前三人の夫が次々に亡くなっていったから。
三回も夫に先立たれたなると、世間からはどうしても悪いイメージがついてしまいます。もちろん香淑本人は、それに輪をかけて苦しい思いをしています。
ですがだからこそ、そんな自分を見初めてくれた新しい夫とは、今度の結婚こそは幸せな夫婦生活を送りたい。そう願っていたのですが……
新婚だと言うのに夫の榮晋は冷たく、しかもどうやら結婚事態に別の思惑がある様子。香淑はただ幸せな結婚生活を送りたいだけなのに、どうしてこんな苦難を味わう事になってしまうのか。
榮晋、もう少し優しくしてあげようよ。ですが最初はそう思っていたのに、抱える事情が明らかになるにつれ、少しずつ彼にも感情移入していきます。
香淑も榮晋も幸せになって。そんな読者の誰もが抱く思いは、果たして届いてくれるのでしょうか?
今まで三度 結婚し、いずれも早々に夫を亡くしてしまった香淑。
『夫君殺しの女狐』と、酷い噂さをされていた香淑ですけど、そんな彼女に四度目の縁談の話が舞い込んで来たのです。しかも相手は香淑より十歳も若い、裕福な家の出。
誰もか羨む結婚話ですけど、よく考えてみてください。『夫君殺しの女狐』なんて言われている香淑をわざわざ娶るだなんて、相手はいったい何を考えているのか?
うまい話には裏があると言いますけど、残念ながら今作も例に漏れずに、あるのですよね。裏が。
嫁いできた香淑に、冷たい態度をとる夫、榮晋。
妻として尽くそうとするも、冷ややかな視線を浴びせられ、罵られ、心をえぐられる香淑……酷い、いったい香淑が何をしたって言うんだ!?
とまあ、これだけだと榮晋が最低夫のように思えるでしょうけど、もちろん彼がこんな態度をとったのには……そもそも、香淑を娶ったのには、ちゃんとした理由があるのですよ。
それは長年、榮晋の一族を苦しませてきた、ある呪いに関わるもので……
曰く付きの結婚から始まる、仮面夫婦の中華ファンタジー。
訳ありなのは夫婦二人とも同じなのですが、いくら夫から冷たい態度をとられても、妻として尽くそうとする香淑が健気で。
誤解があるなら解いてほしい。ちゃんと二人で幸せになってもらいたい。そう応援せずにはいられない、ハラハラとドキドキに溢れた夫婦の物語です。
綾束さんのお話といえば、お砂糖たっぷりの焼き菓子に甘ぁいクリーム、そしてその上から粉糖をぱらぱら~ってな具合に、これでもかっていうじれじれの甘々なんですけれども、むむむ、おかしいぞ、今回はなかなかその展開にならないぞ、と。
今回のヒロインの香淑がですね、もう可哀想で可哀想で、健気で健気でですね、綾束さぁ~ん、早くこの子を幸せにしてあげてぇぇぇぇぇ!!!って。
でも、やっぱり面白くて毎日毎日更新が楽しみでですね。
やっと甘々展開に入りますと……
甘――――――(*ノωノ)――――――――いっ!!!!
待ってた!
もうこれを待ってた!
連載開始から、この日をずっと待ってたよ!!
この、焦らし上手っ!て。
というわけで、あらすじとか何にも書いてませんけど、とにかく最高でした。
私からは以上です。
何度も夫に先立たれ、夫君殺しと呼ばれる33歳の香淑。
四度目の婚姻をするが……。
48話まで読了時点での感想となります。
さすが多くの秀作を輩出されている作者・綾束乙さま。
この作品の文章もとめどなく流れるようで読みやすく、世界観や設定も練られているのに、すっと読者に馴染むよう綴られています。
主人公の香淑はとても素直で奥ゆかしく健気なのですが、途中から芯のある決意を抱く潔い女性。
おおぉ、とそのカッコよさに思わず声を上げてしまうほど、思慮も深く好感度の高いキャラクターです。
そして、夫となった榮晋も美しいだけでなく、己の宿命を背負いつつ懸命に解決へ向けて動く姿は素敵です。
理由があって酷い態度を取ったりしますが、ちゃんと彼の視点で心情が描写されているため、読者は嫌な気分になりません。
返ってドキドキしてしまうくらい話の運びがお上手です。
大変完成度の高い作品ですので、どなたでも安心して読み始められると思います。
わたしも続きが毎日楽しみでなりません!ヽ(^。^)ノ
結婚した夫が立て続けに死んでしまったせいで、夫殺しという異名を付けられた香淑。しかし彼女はただただ純粋で、こども好きな普通の女性だった。
だが周りはそんな彼女を忌み嫌い、恐れ、あやかし扱いする。婚期もとうに過ぎ去り、再婚を諦めてた彼女に予想もしない青年が結婚を持ち掛けてきた。
青年の名は榮晋。十も年下の美丈夫は、彼女の夫殺しの噂を信じていた。そしてあえて娶った訳とは?
双方に秘密を抱え、それでも嫌いになれず、すれ違う、切なく甘い恋愛が織り込まれつつ、哀しい宿命から逃れる為に奮闘する主人公たち。
まだ連載の途中ですのでネタバレは避けますが、気になった方は是非読んで貰いたい作品です。特に切ない恋愛ものや、ミステリー好きな方にはお勧めです!
実は中華風のお話は些か苦手意識があり、いままで中々読める作品がなかったのですが、こちらの作品はとても楽しく読むことができて感動しました。丁寧な地の文はリズム感も良く、堅苦しすぎなくて大変心地良く読み進められました。
いま主流の長いタイトルですが、中身は純文学の如く深みがあり、人物達のやり取りやストーリーなど最高に楽しく引き込まれます。お話の構成そのものがとてもお上手で、個性の強いお二人の結婚生活に色々な意味で興奮がとまりません。
まだ四話のみの更新ですが、この短い話数の中で既に大変濃度の高い内容が繰り広げられていて、あまりの凄さに思わずレビューをさせて頂きました。今後も続きが楽しみでなりません。