あとに残りし姫恋しや

  • ★★★ Excellent!!!

多くの方が素直なレビューを書いておられますので、少しひねくれた観点から。

この作品を読了後、私は子供の頃に読んだ昔話を思い出しました。「猿むこ」という昔話で、爺さまが、畑仕事を手伝ってくれた猿に、お礼に娘の一人を嫁にやるとつい口を滑らせるのですが、爺さまを想って約束通り嫁に行くことにした末の娘が機転を利かせて猿を溺れ死なせ、爺さまのもとに戻って来て幸せに暮らす、という物語です。

川に落とされ、流れ死のうとする猿は、最期に娘に歌を詠みます。

『川に流るる猿の命は惜しくはなけれどあとに残りし姫恋しや』

この作品を最後まで読まれた方であれば、私が誰を思ってこのような昔話を思い出したのかわかるでしょう。そして、しんみりと物悲しいこの読後感が私にとってどういったものであるかは、星三つの評価からご理解いただけるかと思います。

どこまでも丁寧に描かれた物語であるから、多面的な解釈が可能であり、その分だけ様々な感動があるのだと思います。

たいへん面白かったです。

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