性格――と言うより、この世界の基本的な認識に問題を抱えた一人の女の子を描いた物語です。
ファンタジックな設定、他作品のスピンオフという要素、そういったものをすべてとっぱらって、私はこの作品を純粋にその女の子の物語として読みました。正確には、そのように読まされました。
それほど、その女の子の描写が克明でした。引き込まれるように、一気に読んでしまいました。
ものの見方や考え方、そういったものが普通の人とはまったく異なるその女の子は、いわばデフォルメされた架空のキャラクターそのもので、けれども私には、その女の子が自分の人生で過去に出会った実在の人物とそっくりに見えました。
だから私は、この物語は『寓話』だと思いました。きっとどこにでもいる、この世界にうまく馴染めないでいる人を、この世界ならざる異世界の住人になぞらえ、そうしたフレームの中で描かれた、せつなくてやさしい『寓話』なのだと。
とても面白かったです。