忘れない。忘れたい。

新米納棺師の苦悩と葛藤を描いた邦画「おくりびと」。
怪に魅入られた特殊清掃員を描いたホラー映画「クロユリ団地」。
こうして例を挙げ始めれば枚挙に暇がないほど、
「生と死」、そしてその「境界」は多くの作品が扱ってきたテーマです。

またその重たい主題は、
永遠に答えの出ない禅問答のように、
生きとし生ける人々を惑わせ続けてきました。

本作品の中では、華やかな門出を祝福されるはずの新生児の死をきっかけに、
日常生活のありとあらゆるバランスが崩壊していく姿が描かれます。

遠く他人事だと思っていた死の存在は、実は我々の生と地続きの場所にある。
忘れることさえ許されない悲痛な死の存在が、我々の生の中に土足で踏み込んでは手を招く。

そうして出口の見えなくなった主人公の苦しみの生々しさに、
思わず視界が滲んでしまいました。

抗いようのない悲しみに心を侵食されてしまった時、
人はどのようにして前を向けば良いのでしょうか。

この作品を読了した今も、答えは尚、私の中にありません。

それでもこの作品のタイトルが【埋葬】である意味を思えば、
赤子の死と地続きの場所にある新たな生を迎え入れる覚悟を、
作中の彼らの眼差しに見ることができます。

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