第6話
翌日もほぼ同じパターン引き籠り。だが連日の努力が実ったようで、撮影会に興味があるという女からメールがきた。夜七時に馬場のドンキ前で待ち合わせした。その女のブログを読み返すと、どうやら高校生らしい。撮影会スタジオの只野に宣材撮影のアポを取り、次に彩音にまた電話してみる。通知ベルがしばらく鳴り、やはり繋がらないと諦めかけた時、ベルが止まり静かになった。おれはスマホを耳に押し当て聞き耳をたてる。
「こほっ!」
軽く咳き込む声が聞こえた。彩音ではない、男の咳。
「おい! おまえ誰なんだ?」
暫時、電話が切れた。誤って電話に出てしまったような感じだ。おれは薄気味悪くなって警察に捜索願いを出すべきか、ふと考えた。ネットで最寄りの警察署を確認までした。高校生との待ち合わせ時間が迫っている、おれはズボンを履き上着に袖をとおしてネカフェを後にした。
ドンキには約束の時間より少し早く着いた。店内に入り酒売り場に行く。今日こそ只野に酎ハイを持っていってやろう。レジで清算をしているとメールの着信音がした。慌ててポケットからスマホを出してスクリーンを見る。
『つきました。花柄ワンピースにじ~じゃんです』
表に目をやると、店先に立っているショートカットの後ろ姿が見えた。おれは財布をしまい声を掛けると只野のスタジオに向かった。
「絵梨って言います。よろしくお願いします」
「こんばんは! よろしくね。絵梨ちゃん現役なの?」
「はい、通信ですけど」
「そっかぁ」
「さっきまでマックでバイトしてました」
「頑張るねぇ~。良かったよ、じぃちゃん来ないで!」
「えっ?」
「ほら! 花柄ワンピースにじ~ちゃんですって!」
「あ~」
絵梨の笑顔は屈託がなくて、アラフォー中年親父のおれには太陽のように眩しかった。これだから撮影会に来るカメ親父にも高校生は人気があるのだろう。
今日は撮影会はないらしくて、只野は絵梨の宣材を撮影する準備をして待っていた。おれは彩音の事が気になっていて、絵梨の撮影は只野にまかせっきりで上の空だった。撮影が終了し絵梨が私服に着替えている間、おれは只野に相談してみた。
「やっぱ出した方がいいっすかね? 捜索願い」
「浮気あるいは夜逃げかもですよ」
おれが持参した酎ハイを飲みながら只野は生真面目に言った。
「男の咳が聴こえたんですよ! どうなのかなぁ?」
「捜索願い出しても、ほとんど捜してくれないみたいですよ。ほらこれ」
「この特異行方不明者に該当しないと捜してくれないみたいです」
おれはモニターに表示された項目に目をとうした。
「犯罪にまきこまれていて、精神的に不安定な女で、自殺の怖れがあって、自傷の危険性があればっすね」
「そうですね! あと捜索願いを警察に届け出る際に必要な情報ってありますから、プリントアウトしますよ」
絵梨が着替えを終えておれ達のいるパソコンデスクにやって来た。
「お疲れさま!」
「絵梨ちゃん! お疲れさま! あとで芸名考えておいてね! じゃぁ遅くなっちゃうから行こうか! プロフィールはあとで只野さんにメールします」
「まだ八時前だし、あたし大丈夫ですよ」
「門限ないの?」
「あんまり遅くなければ平気! この時間だと親もまだ帰ってこないし」
「おぅ~、 最近の高校生は違いますね~、発育も良くって!」
絵梨のほっぺが朱色に染まる。只野はプリンターが吐き出した用紙を、おれに手渡した。
「お手間かけました、こんなにあるんすか!」
「情報が多い方が警察も捜しやすいですから。戸籍謄本あれば信頼感、増しますよ」
用紙に穴が空くほど食い入って見ていると、横から絵梨が不思議そうに顔を寄せてきた。おれは慌てて用紙を折りたたむ。
「お子ちゃまは、見ちゃダメよ」
「あ~ズルいぃ」
「あっそうだ! 只野さん、この間の雷の・・・・・・ちっこい器械」
「電磁パルスの試作器ですか?」
「それそれ、もし良かったら2・3日貸してもらえないっすか?」
「構いませんが・・・・・・」
「やぁね! 彩音に万が一の事があったらと思って! 秘密兵器っす。おれ、これから捜索の旅に出ますょ」
「愛の力って奴ですかね~」
只野が細めた両目をパチクリさせて、しんみりと呟いた。
絵梨は服を見てから帰るらしくて、人通りの多い早稲田通りに出ると別れた。駅とは反対方向におれは急ぐ。明治通りを左に曲がり緩やかな坂を下りきると戸塚警察署がある。
入口の警杖を地面についたマッポに軽く頭を下げてエントランスホールに入った。どこに行くべきか迷っていると、正面の長机にいた私服みたいなマッポに用件を訊かれた。おれは内ポケットから只野のプリントしてくれた用紙を出す。
「行方不明者届けね。そこ座って! え~と、どなたが行方不明なのかな? 上から順に教えてぇ」
おれはスマホの画面をマッポに見せた。
「当人の写真です」
「あぁ君。これじゃ困るよ。写真にして。じゃぁ次、行方不明者氏名は?」
「澤村彩音、妻です。」
「本籍、現住所、生年月日?」
おれと彩音の住基カードを見せた。
「本籍わかりますか?」
「下落合なんですけど、すいません。明日、戸籍謄本持ってきます」
「じゃぁ写真も用意してもらって、また明日にしましょうか?」
「あっ! いやっ! 後は完璧なんでお願いします」
「変った事いう人だね? 夫婦喧嘩で家出されたって訳じゃなさそうだ。奥さんの特徴は?」
「居なくなった時の服装は、ピンクのゴスロリでミニスカートを履いて、黒いガータベルトをつけてます。髪は金髪に赤いメッシュ!」
「ゴスロリっていうと?」
「ゴシックロリータです」
「洋服の名前かね?」
「いえいえ、服の種類で。そうすっね・・・・・・ベルばらみたいなやつです」
「ベルばら?」
「宝塚の衣装ですよ」
「あぁ~はぃはぃ」
「身長は155センチぐらいで、ちょいぽちゃです。リスカ痕が腕や腿にたくさんあります」
「ほぉ、精神的な病持ちかね?」
「えぇ、そうなんですよ。ですから心配でして! 傍目にも分かるぐらい急に、こう、ぐらっと気落ちしたりして。死にたい、なんて言うんですよ」
「おやおや重症ですね」
「はい! 可愛そうに・・・・・・」
おれは瞳がうるるるになるよう頑張る。
「家出なさったのはいつですか?」
「二日前です」
「場所は?」
「池袋です。デートクラブまがいのとこで男と知り合ったようで、その翌日からです」
「その男の雰囲気は?」
「50代ぐらいの中年サラリーマンでした。これがそいつの電話番号です」
ポケットから直井の書いたメモを取り出す。
「デートクラブはやはり池袋に?」
「はい、そのようです。彼に訊いて下さい。オーナーですから」
おれはメモの空きスペースに直井の名前と電話番号を書いた。
「奥さん、立ち寄りそうな場所って、どこか思いあたりますか?」
「ライブハウス、ホストクラブ、ラブホテル・・・・・・」
「ひどいもんだね」
「あと知り合いの大学生の家ですかね」
「具体的な店名や名前、住所とか、覚えてるだけこの紙に書いて。それと電話番号」
スマホでググったりして用紙を埋めていく。
「奥さんは自動車は運転できないね」
「はい」
「所持金はいくらぐらいかな?
「3万ぐらい持ってると思うんすけど」
「カードは?」
「ないです」
「奥さんの友人関係も旦那さんが知ってる範囲で、書いておいて」
蘭ちゃんのほか数名の名前と電話番号を書き終わると、マッポは眉間に皺を寄せて字面を追った。
「特異行方不明者に該当しますかね?」
只野からの受け売りを訊いてみる。
「出来るだけ急いで当たるんで! 前もって言っておくけど、奥さん見つかっても我々は連れ戻す事は出来ない。あくまで生存の安否確認になるって事。私は斎藤って言います。もし明日いなければ誰か外のものに謄本渡して下さい」
「分かりました。写真! その辺でプリントしてすぐに持ってきます」
上着のポケットからはみ出しそうな電磁パルスを掴んで、遮二無二近所のコンビニに走った。
翌朝、役所に戸籍謄本を貰いに行く。昼は直井たちとの約束がある。
あれから何回も彩音に電話してみたが繋がらなかった。
長椅子に座り呼ばれるの待っていると、只野からメールがきた。添付画像がいくつかある。開いてみると絵梨の宣材写真だった。ほどよくフォトショで修正されてスタイル良く仕上がっていた。文面を読んでいくと
『現役高校生のモデル活動は親と学校の了解を得ていて、プロダクションの所属契約をお願いします。最近は警察地域安全課の締め付けが厳しいので! 親の同意書と所属契約書のコピーを下さい。よろしくお願いします』
ようは警察はおれ達に手間ひまかけさせようって事だ、取りあえず無難に『わかりました』と返信しておいた。
戸籍謄本を受け取ると戸塚署に急いだ。歌舞伎町にある役所から戸塚署まで歩くには少しばかり骨が折れるが、同じ金を払うなら缶ビールの方がいい。昨日と同じように警杖を握る門番のマッポにニコりと会釈して中に入った。婦警がいたので斎藤を呼び出した。婦警の前には若い女が肘をテーブルについて俯いている。その横顔昨夜と同じ服装、絵梨だった。おれは絵梨の背後に回り距離をとった。厄介事に巻き込まれるのは御免だ。家に帰らなかったのだろうか?
「やぁ! 澤村さん。お待たせしましたね」
斎藤がエレベーターから出て来た。図太い声に絵梨がゆっくりと上体を起こす。振り返らない事を願い、おれは斎藤に手を上げてぎこちない笑みを作った。謄本の入った封筒を差し出すおれの手を斎藤は遮った。
「必要ないよ。奥さんに連絡ついたんで!」
「本当ですか?」
思いもよらない斎藤の一言に、さすがにおれは気が動転した。
「澤村さん!」
冷静にしてくれたのは絵梨の声だった。
「お知り合いですか?」
さっそく婦警が訊いてくる。謄本を手にしているのに、まさか娘の友達とも言えず言葉を濁す。
「この子深夜徘徊で声かけたら未成年だったんで保護したんです」
「あたし、何もしてないしーーー」
「喫煙してたでしょ!」
婦警の口調が厳しくなった。
「親御さんとは連絡ついているんですが、ふて腐れて動こうとしないんですよ」
「電車なくなっちゃったから帰れなくなったんじゃん」
「だから車で送るって言ってるのに」
「パトカーなんて乗んない」
「絵梨ちゃん。 おじさんがお話終わったら、一緒に帰ろうか?」
おれは聖人君子を装い言った。
「まぁ澤村さん、奥さんの件、先にお話済ませましょう」
返事をしない絵梨に斎藤が割って入った。
「そうですね」
「澤村さんが記載してくれた店舗と友人関係に、電話で捜査協力のお願いをしました。聞き取りを進めていくと、井上蘭さんが奥さんに電話してくれる事になりまして、捜査員も立会い奥さんの安否が確認されました。昨夜澤村さんが署から帰られた後の事です」
「で、どこにいました?」
「それはまだ特定出来てません。最初に奥さんの電話に出たのは男性でした。名を明かそうとしないので電話している蘭さんに無理に訊かないようお願いして、会話を続けてもらうと。男性が言うには、奥さんは元気だけれど精神的に疲れているようです。でここが重要ですが、旦那さんにドメスティックバイオレンスを受けていて逃げてきたそうですよ」
おれは開いた口がふさがらなかった。
「彩音が言ったんすか?」
「いえ、男性の言葉でした」
「デタラメだ! あいつは自分でやったんですよ。 その度にカッターをおれが捨てるんですけど、あいつ! いつの間にか買い込んでシーツの下やクローゼットに隠すんですよ」
「まあ我々としては安否確認は取れたので、これ以上は少し様子見という局面にならざるを得ません」
「はぁ? あの、すいません。おれ夫っすょ」
「えぇ。承知の上です」
「そんな事って、ありっすか?」
「だから昨日言ったじゃないですか、警察としては、あくまで生存の安否確認になりますって。手放しにした訳ではないんですよ。我々で早急に奥さんにお会いして、状況把握しますし、随時観察は継続します」
「彩音がおれに会いたくないって事っすか?」
「ですから、その辺も含めて・・・・・・」
「分かりました」
嘘っぱちだ、彩音と一緒にいる男のでっち上げだ! そうに決まっていると思うけれど、やり場のない虚しさで全身の力が抜けた。
「という事で、今日の所はこれでお引き取り下さい」
「行こう! 澤村さん」
絵梨の冷たい声がした。
署を出ると、見送る婦警に絵梨が目尻を指で下げ、あっかんべをした。
「澤村さん。奥さんと喧嘩でもしたの?」
「してないよ。ただ家追い出されちゃってさ! 家賃滞納で」
「お金かぁ~」
「世の中、金だよな!」
「わたしの親、離婚して母親しかいないの」
「そっかぁ・・・・・・じゃ絵梨ちゃんとこも生活大変だよね」
「でもさ! 澤村さん奥さんのこと愛してるんだなぁ~て、思ったょ」
「おっ! 泣ける事言ってくれるじゃん」
「あたしも大人になったら澤村さんみたいな旦那さん欲しいなぁ」
「あははっ! 絵梨ちゃん、おれの事知らないからだょ。大人は怖いんだぞ」
「あ~! おなか空いちゃった」
「なんか喰っていくか? お母さんには連絡してあるんだろ?」
「うん。もうこの時間だと仕事でてるよ」
二人で机に向き合いうどんを啜っていると、まっとうに生きていれば、おれにもこんな年頃の娘がいるんだろうと思った。
遅い朝飯を喰い終わり絵梨と別れると、彩音に電話した。普段だと寝てる時間なので出るはずもない。次に蘭ちゃんに電話を入れる、警察よりもう少し詳しい話が訊けるはずだ。相手の男の住所が知りたい。だが蘭ちゃんも繋がらなかった。
『授業中、あとで電話します』すぐにメールが来た。
直井たちとの待ち合わせまで小一時間。山手線に沿って線路沿いを歩いたり、少し離れた住宅地を抜けたりしながら歩く。直井は腰抜け野郎だし、ポケットには電磁パルスがある。飯井は嘘はつけまい。蘭ちゃんから着信だ。
「御免なさい」
「あ~蘭ちゃん! 昨夜、警察から電話きた?」
数秒、間があいて声が聞こえた。
「うん、彩音ちゃんの事で訊かれたの」
「警察で彩音に連絡がついたってのは聞いたんだけど、どこにいるんだろね?」
「私もわからないわ? ただ彩音ちゃんに今度遊ぼうねって言われたよ」
「彩音が電話に出たの?」
「うん。あっ! 言っちゃまずかったかな?」
「そんな事ないよ」
「彩音ちゃんの居場所がもし分かっても、澤村さんに教えないようにって警察の人に言われたの。何でだろね?」
「そうなんだ・・・・・・電話ありがとう。勉強頑張ってね!」
警察は、おれが妻いびりをしていると用心している。世の中どうかしちまってる。
ビルに入りエレベーターで上がる。おっパブは昼間でも営業していた。店内に入ると夜と変わらず薄暗い室内にユーロビートがわめいている。ギャルソンがいないので勝手に別室のドアを開けた。狭い部屋で直井と飯井がスマホをいじっていた。
「よぅ! 来たぜ」
いきなり開いたドアに二人が驚く。
直井は冷蔵庫からお茶のペットボトルを出して、おれに差し出した。相変わらず小指をおっ立てている。
「直井さん。小指なんで、こうなの?」
おれは小指を立てて見せた。
「ちょっとしたもめ事っす・・・・・・」
「女?」
「もてる男はツラいっす」
よくもヌケヌケと言う。
「直井さん、君のそのスマホ貸して」
衝撃の先制攻撃をおみまいしてやろう。ポケットから電磁パルスを出す。
「なんすか?」
「見てみたまえ」
スイッチをいれるとバチバチバチと電流の破裂音がして、スマホのスクリーンが真っ黒になった。
「あぁっ! 止めて下さいよ」
「何ですか? これは?」
飯井も心配そうに目を向けた。
「電パルって言ぅてな、小さいけど雷みたいな電流放射するヤバい代物だ」
「電源入んないっす」
「そいつは既に死んでいる」
昔読んだヒーローさながらに言った。
「じゃ、本題に入りますか。飯井さん、この間の寿司屋以後、彩音に会ってるんすか?」
「いいえ、会うも何も連絡先知りませんし」
「彩音はおれの事、何か言ってましたか? 不満や愚痴みたいなことは?」
「特に聞きませんょ。お父様ですよね? こほっ! 失礼しました」
彩音の奴、おれを父親って言いやがった。
「そうすか・・・・・・家に囲ったりしてません?」
直井が恨めし気にスマホをいじっている。飯井の咳が気になった。彩音の電話に出た男も咳をしていたからだ。おれは飯井の靴や服を矯めつ眇めつ眺めた。
突然、部屋のドアが開く。堂島と見覚えのある若い男がいた。
「おすっ」
堂島が卑猥な笑みを浮かべる。いるはずのない嫌な奴を目の前にして、おれはたじろいだ。堂島のシャネル・エゴイストプラチナムの香りが危険を暗示する。
「こいつか? どうだ?」
堂島が顎をしゃくる。若い男がおれを睨んで頷く。
若い男、ホストだと思い出した時、堂島の蹴りでおれは丸椅子ごと床にぶっ倒れた。
「この野郎! 恩を仇で返しやがって!」
逃げようと身をよじるが、思うように身体が動かない。
「裏ビデオの時はガサも入って多めに見てやったが、今回はいけねぇな!」
「堂島さん! こっちの飯井さんはおれの客なんすけど、こいつの女連れ回してるって因縁つけやがるんすよ」
「おまえな、堅気から金せびろうとしてんじゃねぇよ」
おれはポケットの電磁パルスを握りしめた。
「若い女に溺れてるんすよ! ケツの穴に突っ込んでやろうか」
直井が小指を手ててヒステリックに叫ぶ。
「女みてぇにメンソール吸ってるしな」
ホストの唾が飛んでくる。
「埋め合わせは、考えるつもりだ・・・・・・」
「どうしてくれるっつんだよ! 寝ぼけた事言いやがって」
堂島がおれの髪を掴み上げる。
「こういう事だよ!」
おれは電磁パルスを堂島の脇腹に突き立てスイッチを押す。
「あっ! 堂島さん、気を付けてください!」
直井が跳び退く。
「・・・・・・なんだ?」
堂島は一瞬ひるんだが、おれの髪をさらに高々と引っぱり上げた。鉛みたいな塊がおれの顎を砕き、顔面にもう一発!
意識が戻るとベットに寝かされていた。鼻が折れているのかジンジンと痛む。腫れあがった瞼を少しづつ動かしてみる。
「気がついた?」遠くで聞こえる。
薄ぼんやりと白い天井が見えてきた。
オブラートに包まれた小づくりな顔と黒いレザーチョーカーがある。
彩音の匂いがする。
「真面目くんが本気になっちゃったから逃げてきちゃった」
もう一人金髪の女がいるように見える。
よくよく見ると、プーリップのデカい目ん玉がぎょろぎょろとおれを見ていた。
後日、只野が見舞いに来た時、細めた両目をぱちくりさせておれに言った。
「電磁パルスは人体にほとんど影響ないんですょ。言いませんでしたっけ!」
愚かな訳をきかないで、おれってば「ひとを愛する心」なんてとうの昔に忘れたはずなのに、、 みつか @mituka
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