最後に向かうことの災難
「ミナ、誕生日おめでとう!」
「ありがとう! マカ」
翌朝、私は早速ミナにプレゼントを渡した。
駅前の喫茶店に呼び出し、今日も学校は休みなので、一日遊ぶことにしたのだ。
「プレゼントはこっち。早速開けて見て」
「うん!」
ミナは包装紙を開けて、中身を取り出した。
「わぁ…! 可愛い♪」
「ミナに似合うと思って。後こっちはミナの好きなモモのゼリー! 保冷剤を入れてるから、お昼にでも一緒に食べましょ」
「ありがとう! マカ。大好き!」
抱きついてきたミナを、私は笑顔で受け止めた。
「うん!」
『…前々から思っていたんだけどね』
「何だ?」
『何でマカって、ミナってコとの態度が違うの?』
家に帰り、ケータイを開くと、ハズミが怪訝そうな顔で言ってきた。
「…ミナにも以前はこういう態度だったさ。だけどちょっとしたトラブルがあってな。それで人格を変えただけ」
『ふぅん…。辛くない?』
「厳しい時はあるがな。それでも自業自得なんだから、しょうがあるまい」
ミナ以外を中々生きている人間と思えなかった時期があった。
そのせいで…私は親友から、自分を消してしまった。
『まっ、そういうこともあるよね』
ハズミが意味ありげに笑った。
…自嘲だな。
ちなみに今、私は自室に戻っていた。
そこには私とハズミしかいない。
「…なあハズミ」
『何?』
「お前にちょっと付き合ってほしい所がある」
『オレに?』
「ああ、お前に」
ハズミは首を傾げた。きっと思い当たるフシが無いせいだろう。
『まあ…良いケド』
「すまんな。次の休日、行きたい所があるんだ。そこにお前も連れて行く」
『うっうん…』
「さて…、今日はもう寝よう」
ここ最近、少し騒がしかったせいか、眠気がある。
布団はすでに敷かれていた。
『今日はあの女の子達は?』
「仕事が片付き次第、来るさ」
電気を薄暗くし、私は布団に潜る。
ケータイを握って。
『ねっねぇ、マカ』
「何だ?」
『あの昨日会ってたシヅキってヤツも、マカと同じなの?』
「シヅキ? 当然だろう。私がこの人格でいる時は、血縁が関わっていると思って良い」
逆を言えば、普通の人間の前ではミナに対する時のような人格で接する。
『そっそうだよね』
「何だ? シヅキが普通の人間に見えたか?」
『…少なくとも、キミよりは』
「言ってくれるじゃないか。まあ否定はせんがな」
私は欠伸を一つして、目を閉じた。
「シヅキは父親の代から、この表の世に住んでいる。生まれも育ちもこっちの世界だ。そのせいか、考え方が普通の人間寄りだな。血筋で言えば、本家よりだが…」
『…そうなんだ』
ハズミの僅かに沈んだ声に、薄目を開いた。
「何だ? シヅキのことが気になるのか?」
『う~ん。…昔、似たようなタイプの人が側にいたからね』
「ほお」
『ちょっと懐かしくなっただけだよ』
そう言ってハズミは黙った。
なので私は眠りについた。
―その夜。
不思議な夢を見た。
ハズミが出てきた。
ライトブルーのケータイを握り締め、項垂れている。
『…メン。ゴメンなさい』
そしてずっと謝っていた。
ケータイの画面には、
(ずっと好きだった。愛してる)
と写っていた。
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