夏の夜の道しるべ
川面を撫で、街のほうへと吹き抜ける涼しい風。
浴衣の衣擦れと下駄の音がひしめく堤防を、人の波を掻きわけて進む。
花火が上がるたびに、七色の光がすれ違う人の幸せに満ちた表情を照らす。
去年の今日、交わした言葉はなんの保証にもならない曖昧な約束だった。
それでも僕は信じていた。
きっと君は来ると。
もうすぐ花火が終わる。
それは北海道の短い夏の終わりを意味していた。
高校を卒業して以来、お互いに年に一度だけ帰ってくる故郷。
その年によって日程も日数も変わったけど、花火大会の日だけは必ず含めるようにした。
それだって約束したわけじゃなかった。
やがて、金色の光の粒が夜空一面を埋め尽くす。
人々の歓声が重なった。僕は思わず足を止める。
花火を見るためじゃない。
降り注ぐ光の粒の端っこに、花火を見上げるきみを見つけたからだ。
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