ご飯と味噌汁

「光と影」


月が太陽に嫉妬するとき

僕は君の光になろう


大地が海を妬むとき

僕は君の母になろう


時雨が春の陽光に恋をするとき

僕は君の理解者になろう


そうして僕らはひとつになる


きみが光となるとき

僕は影になろう


……




 えっと、それから……。詩の最後が決まらず、僕は頭を抱える。


 カタン。


 目の前に、湯気を立てたご飯茶碗が置かれた。続いて、味噌汁。甘じょっぱい香りが鼻腔をくすぐる。


「ご飯、できたわよ」

 彼女のやさしい声に、僕はふと思いつく。

「きみがご飯になるなら、僕は味噌汁になろう」

「なに、それ?」



 けらけらと笑う彼女の笑顔は、ご飯と味噌汁よりも、幸せな食卓に欠かせない。



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