あらためて、生権力について~あるいは副流煙のエントロピーや悪の陳腐さなどについて

最近の愚生の投稿に、非喫煙者である葵 春香さんから心優しい応援コメントがありまして、愚生はいささか長文の返信をさせていただきました。


あくまでも、個人的なやりとりとして考えていたのですが、いままで言及してこなかった、受動喫煙とエントロピーの関係や、ハンナ・アーレントの悪の陳腐さについての内容が挿入されていたうえ、フーコーの生権力についてもこれまでのまとめが出来たとおもい、これを時宜として、みなさんにも読みやすく、こちらに投稿させていただこうかと存じました。


葵 春香さんには勝手なこととおもわれるかもしれませんので、申し訳ないのですが、悪意はございませんので、ご容赦ください。


むしろ、葵 春香さんの御蔭で、これらの問題に言及できたので、まことにありがとうございます。


なお、『悪の陳腐さ』については、この返信では説明がたりなかったかもしれないこと、また、バルトのエクリチュール論についても、愚生の誤解があるか、説明がたりなかったかもしれない可能性がありますので、問題がございましたら、また、こちらで言及するかもしれません。


以下、葵 春香さんからいただいた応援コメントへの愚生の返信です。


――


こんにちは!

九頭龍一鬼です。


葵 春香さん、応援コメント、まことにありがとうございます。


葵 春香さんは、現在は禁煙なさったのですね。


何度、禁煙しようとしても失敗してしまう魯鈍なる愚生は、葵 春香さんをふかく尊敬いたします。


タバコを喫っていて一番こまるのは、葵 春香さんの仰有るとおり、お金の問題でして、本統に、自分は莫迦なことをやっているな、と存じます。


葵 春香さんは現在、非喫煙者でありながら、斯様なる愛のこもったコメントをいただき、まことにありがたく存じます。


――


一応、葵 春香さんが言及なさっているので、受動喫煙についてお話しておきたく存じます。


本文で百科事典から引用しているとおり、タバコの煙にふくまれるニコチンやタールを受動喫煙しても、数日以内に、排尿というかたちで、そのかたの体内のニコチンやタールは、すべて排出されることが科学的に証明されています。


そもそも、熱力学第二法則により、気体は空気中でかならず(かならずというのは、相対性理論よりも確実に)エントロピーが増大いたしますので、よほど喫煙者と密接していないかぎり、受動喫煙による害が生じることはございません。


――


なによりも、愚生が強調したいのは、本文でも言及した、ミシェル・フーコーによる生権力についてです。


愚生の記憶によると、総死者数五〇〇〇万人を超えた第二次世界大戦の勃発と終焉におよび、世界中の天才たちが大戰の原因について、命を賭けて研究いたしました。


デリダ、レヴィナス、ベンヤミン(ナチスに暗殺されたので戦中になりますが)、ハンナ・アーレント、などの人文科学系のほか、フロイト(死ぬまでヘビースモーカーでした)とアインシュタインが永遠平和についての往復書簡を公開なさったのも有名です。


そんななか、躬自らが同性愛者であったことから、ナチスの障碍者虐殺作戦『T4作戦』を中心に研究したのがフーコーです。


詳細は本文にゆだねますが、権力者が国家をひとつの肉体としてかんがえ、国家という肉体を健康にするために、不健康な『人種』(じつは、人種という言葉を現代的な意味ではじめてつかったのがフーコーです。この場合、生物学的な意味を超えて、『国家の健康に害をなす存在』という意味をもち、大日本帝国における非国民というシニフィアンがこれと一致すると指摘されております)を殺してしまうというのが、生権力の概略です。


この生権力にもとづいたヒトラーが、まずおこなったのがドイツ国内における禁煙政策であり、禁煙政策が成功したことで、ヒトラーは国内の同性愛者や障碍者を虐殺するというT4作戦を決行しました。


爾後、アイヒマンを劈頭とし、ホロコーストがはじまり、第二次世界大戦の釁端がひらかれたのは、説明するまでもないかと存じます。


ここで、あえてアイヒマンの名前を出したのは、このヒトラーによる禁煙政策を推進したのが、瞥見すると善良なる一般市民であり、つまり、禁煙政策からホロコーストや第二次世界大戦を惹起したのは、ハンナ・アーレントのいうところの『悪の陳腐さ』であったことを、人類は忘却してはならないと存ずるからです。


愚生自身、自閉スペクトラム症や統合失調症に罹患しており、ふたたび、生権力が発動したら、まっさきに犠牲になる立場にございます。


そのような視座から、決して、障碍者大虐殺を肇始とする第二次世界大戦のような巨大なる悲劇をくりかえさないように、喫煙者として、生権力をゆるさない立場をつらぬくのが、愚生らの使命だと存じております。


ロラン・バルトはエクリチュール論において、(モード論などが有名ですが)人間はさまざまな種類のエクリチュールによって、自分の本質が規定されることを指摘しました。


たとえば、暴走族は特攻服というエクリチュールを纏うことによって、むしろ、特攻服というエクリチュールそのものに自分が規定されている、というのがバルトの主張です。


それとおなじように、愚生は喫煙者としてタバコというエクリチュールを纏うことによって、ふたたび、障碍者が虐殺されたり、世界が戦争にまきこまれたりしないように、生権力に反撥しつづけることを、躬自らに課しているということをご理解いただきたく存じます。


――


もし、葵 春香さんが斯様なる傲慢な言説をゆるしていただけるのならば、どうか、愚生をふくめ、世間の喫煙者のみなさんを、すこしでも愛のある視座で見守ってくれたら、これほどうれしいことはありません。


愚生は、タバコの増税や健康被害などの問題よりも、喫煙者、非喫煙者というだけで、憎悪しあう社会になってしまうのが、悲しくてなりません。


愚生は、喫煙者代表として、非喫煙者のかたがたとも、友好なる関係を構築してゆければ、と存じます。


――


以上が、葵 春香さんの応援コメントへの愚生の返信です。


本文にもございますように、愚生は、喫煙者と非喫煙者が憎悪しあうのではなく、大袈裟ですが、愛をもってかかわりあえる世界を希求しております。


いつも、非喫煙者のみなさまを不愉快にさせるようなことを投稿していたら、申し訳ございません。


どうか、喫煙者様も、非喫煙者様も、おたがいがフーコーのいう『人種』によってへだてられたものではなく、おなじ人間なのだということを失念なさらずに、普遍的な愛でつながれるように希求しております。

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『禁煙ファシズムとの死闘』エッセイ集 九頭龍一鬼(くずりゅう かずき) @KUZURYU_KAZUKI

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