相対性理論と石……そして未来へ
「この芋スナ野郎が!」
男が暗がりで粘着く笑みを浮かべながら、カチリとマウスをクリックする。と、同時に“バスン“と言う音が響き、画面の中のスナイパーがバタリと地に伏した。
「雑魚め。ヘイヘイ、死体の上で勝利のダーンス!」
「何をしておるのだ?」
ヌゥっと厳つい顔が男の横から突き出た。
「あ、死体蹴りしてる。キミ、マナー悪いねぇ」
もう片方から細身の顔が現れた。
「これはFPSよ、おじちゃま。一人称視点のTVゲームなの」
突如として現れた見知らぬ三人に男は驚き、声を荒げた。
「な⁉︎ アンタら、どこからきた!」
「私たちは…(以下同文)よ」
「神?……ゲームのしすぎかな?」
目の前の妙な三人組は夢か現か。 男は頬をつねった。痛い。だが、まだ現実とは思えなかった。
厳つい男に優男、それに謎の少女……美少女である。少女は男のストライクゾーンであった。当然違法である。皆も気をつけよう。
痛い夢もあるかもしれない。夢なら触っても良いだろう、と男が
「触るなゴミめ」
突如、強い力で男が床に押し付けられた。普段とは違う
「と、時ちゃん?」
「私、
「だ、だじげて〜。もうじまぜん〜」
男の無様な許しと
その傍で
「さて、この時代の石をインターネットで調べてみようか」
「ゲホゲホ……あ、ちょっと。あんた何勝手にさわってんだ!」
むせる男を無視して、
「ふむ、この時代の最強兵器は核兵器と言うんだね。すごい、この兵器は
太陽の中では重水素と三重水素が融合して、ヘリウムと中性子になる核融合反応が起きている。その融合過程で質量欠損Δmが発生し、それと同時に光速(cと定義する)の2乗を積算したエネルギー(E=Δmc2)に還元される。
太陽の光はこの核融合で反応した熱である。また、水爆はこの力を使った最終兵器でもあるのだ。
神話の時代、
「
「
三人のやりとりに、男は尚も混乱し、また尋ねてみる。
「私たちは…(以下略)」
何度聞いても理解ができなかった。
「ヒトよ。尋ねたいことがある。この世界で石は武器か?」
「い、石は石でしょ? どう言う意味?」
「石を使って戦争しているの? ってことよ」
男は質問の意図がわからない。石を使っての戦争とは? 男は暫し迷った後、思いつくことを述べた。
「い、石は戦争の道具ではありません。今の戦争は、銃とか戦車とか、もっと重々しい物で戦っています」
「おじちゃま……」
「もう良い、時ちゃん。もう分かっておったのだ。石の時代はとうに終わっておる。それなのに、ワシは現実を受け入れられず強情を張っておったに過ぎん」
「磐さん……」
「
その時、部屋に聞き覚えのある声が木霊した。
『諦めるのはまだ早いです!』
突如、部屋の隅の本棚から眩い光が立ち上がる。
「あ、君は!」
「ヌウ、お主!」
「よかった、生きていたのね!」
そこには、アカデミックドレスを纏った
「諦めるのが早いとはどう言う意味なんだい?」
「説明しましょう。この時代では石は主流の武器ではありませんが、未来では違います」
「なに⁉︎ どう言う意味だ!」
「第三次世界大戦ではどんな兵器が使われるだろうか、という質問に対して、あのアインシュタイン博士がこう言っています」
アインシュタイン博士は特殊相対性理論を提唱してE=Δmc2を発見した物理学者である。
「曰く『第三次世界大戦についてはわからないが、第四次大戦ならわかる。石でしょう』と」
「!」
「そうなのです。石の時代は未来にあります。諦めてはなりません!」
「行きましょう、おじちゃま!」
「オウ、時ちゃん。まだ希望はある!」
「……」
「
「そうよ。ありがとう」
「いやいや。
「え、どう言う意味?」
「私はあなた様に助けられました。そこで、私はあなたへの御恩をどのように返すべきか考えたのです」
「あなたのお力になるためには信者を増やせば良い。そう考えた私は、あなた様のお姿を描いた書物を世界中にばら撒き、信者を増やしてまいりました」
その時、
「な、な、何よこれぇ!」
「そういえばこの前買った薄い本の娘に似てるな、あんた」
部屋の男が指し示した本棚にある本を読んで
「私の長年に渡る成果により、世界中の男性があなた様に魅了されています! どうでしょう、私のこの偉業!」
「地獄に落ちろ!」
「と、時ちゃん?」
「うぅ、なんでこんなことに……」
「ま、まあ、気を取り直して。まだ旅は終わっていないよ」
こうして神々の旅はまだ続く。だが、人の身で神の旅を追えるのは現代までである。
──どんとはらい
男の武器は“石” 〜 史上最強の石〜 mossan @mossann
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます