男の武器は“石” 〜 史上最強の石〜
mossan
男の武器は石!
石は鉄よりも強し
「神は多くの贄を欲している。捕虜の首を百、用意せよ」
白装束の巫女が宣託を告げると、男達は捕虜達の首を刎ね始めた。
──とある空間──
空中に浮かび上がる鏡が先ほどの光景を映し出している。それを見て、男が呟く。
「僕は贄なんて欲しくないけど……人間って勝手だね」
次々と首を刎ねられる捕虜の姿を見て男はため息をついた。
この男の名は鋼玉土神(はがねたまつちのかみ)。ヒトではなく神々の御柱である。
その後ろ姿を憎々しげに見据える男がいる。彼も、神々の一柱であった。
ホモ・サピエンス(ラテン語で「賢い人間」)は同時期に存在したと他の人類種とは違い、空想するという能力を持っていた。
空想により、共通の文化が生まれ、次第に大きな集団社会を形成していく。大集団となったホモ・サピエンスは、他の種族を駆逐し、更に大きな集団となった。自然、多くの仲間を養うために、大量の食料が要る。その結果、彼らは農耕を覚え、更にその数を爆発的に増加させて、国家を形成した。そして、今では他者を駆逐し、地上の覇者となったのである。
その彼らが最初に手にした武器
──石──
「石は初源にして真理なり」
渋面の
人類の発展は石無くしては成せなかった。時には敵や獲物を殺傷する武器として、時には雨露を凌ぐ住居として、そして頭を垂れて実った麦を刈る農具として、石は人類と共にあったのだ。
しかし……
「しかぁし! 何たる体たらく。人は何故、鉄などと言う軟弱な物に頼るのか! 石こそ遥か太古より続く男の中の男の武器! 男の武器は石に決まっておる!」
感情が抑えきれず、徐々に声が大きくなる。彼柱の名は磐造狒々命(いわつくりひひのみこと)。石を司る御柱であった。
「まぁまぁ、抑えてください。磐さん」
その横でヘラヘラとした優男が
「誰が磐さんだ! それよりも、
「いや、僕は別に武器とか興味ないし。そもそも、祭具で重宝されてので別にいいですよ」
「何と向上心のない! それでも神か!」
神と向上心の関係性は分からない。しかし、
「僕なんかじゃ、とても敵わないですよ。ハガー(
「ぬウゥ。それはワシも認めるところだ。だが、石は切れ味がないが、威力や硬さは鉄には負けん。それに、削れば形が変わる。負ける要素など無いわ!」
出来る神は相手の良さも認める。その上で、
「鉄はその要素を持った上で扱い易いんですよ。石は磐ちゃんと同じで扱い辛いんです」
「貴様、今度は磐ちゃんだと! それに扱い辛いとはなんだ!」
磐ちゃんが
その時、二神の横から、眩い光が瞬き、赤髪でソバージュを効かせた女の子が現れた。
「そんなに言うならば、石の凄さを見に行かない? おじちゃま」
女の子は
神は人々の
彼女の名前は時遡昇比売(ときさかのぼりひめ)。日の本に時間の概念が生まれたと同時に生まれた新しい御柱である。
「おお、時ちゃん。おじちゃんに何か用か?」
「だからぁ、私と一緒に石の未来を見に行かない?」
「
「ぬウゥ、わしと態度が違うぞ」
「そうよ。私は時の女神。おじちゃまのために、石の凄さを人類の歴史から教えてあげたいの」
「学習漫画と同じノリだね」
「あ、だめ!」
「
二柱が止める間もなく、部屋の隅が明滅する。そして、アカデミックドレスに身にまとった白髪で髭を生やした男が現れた。
「私は学習漫画博士命(がくしゅうまんがはかせのみこと)。年端のいかぬ
生まれたばかりの
「神はその存在を信じている人達の思いで生きているのだぞ!」
「まだ学習漫画が無いこの時代に神を創っちゃダメよ。ああ、あの子が!」
「ああ、カマキリの卵は……北極星は……アイちゃん、ワシの研究室に来るんじゃ……フトシくんはいらん」
小学生がいない時代に生まれた
「仕方がないわ。タイムワープ!」
「これでよし。もう、気をつけてね!」
「おお、これが時ちゃん権能なのか?」
「そうよ。私の権能は時空操作なの。おじちゃま、私と一緒に石の歴史を観に行きましょ」
「おぉ、時ちゃん、ワシのために……。おじちゃんは嬉しいぞ!」
「いや! おじちゃま! お髭が痛い!」
「おお、すまん」
「まったく。でも、許してあげる。私、おじちゃまが大好きだもん!」
「おお、時ちゃん!」
「でも、頬ずりはダメ!」
「ヌゥ」
「さて、それじゃあ行くわよ」
次第に
粒子の密度が一定数を超え、二神が時を超え始めた。
「面白そうなので、僕も行ってもいい?」
その時、
「な! この愚かも……」
言い切る間も無く、三神は
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